北京
PM2.577
23/19
評弾の名手・盛小云さん
中国のポップス音楽界において、「戯歌」は人気のあるジャンルです。このジャンルは伝統演劇の節回しを流行歌の中に取り入れ、伝統演劇の新たな楽しみ方を生み出しました。今回の中国メロディーは先週に引き続き「戯歌」の名曲を紹介します。
前門情思大碗茶(前門の大碗茶)
1990年、CCTV中央電視台の年越し番組「春節の夕べ」でベテラン歌手・李谷一さんが歌った「前門情思大碗茶(前門の大碗茶)」は北京の地方劇の趣にあふれ、印象的でした。「戯歌」が新たなポップスジャンルとして全国の舞台で初めて頭角を現したのはこの時が始まりかもしれません。この歌は海外在住の中国人が幼い頃の北京での生活や大碗茶への思いを回想し、故郷北京を想う心を歌っています。
お爺ちゃんは幼いころからここでよく遊んでた
高い前門は私の家の傍にある
お爺ちゃんの三度の食事は
穀物パン 漬物 大碗茶
世間には多くの飲み物があるけれど
大碗茶は一番安くて
芳醇な香りがする
情怨(恋の恨み)
「情怨(恋の恨み)」は中国ポップス界の重鎮・劉歓さんが1996年にテレビドラマ「胡雪岩」のために書き下ろしたエンディングテーマです。歌はポップスと京劇の要素をうまく融合させて、鮮明な中国の伝統的な趣を感じさせ、「戯歌」の定番曲となっています。曲のオープニングで板胡の伴奏の音が鳴り響くと、二百年の歴史を持つ京劇の趣が伝わってきます。劉歓さんの高らかな歌声は京劇の特色のある伴奏とともに、清の時代の政治家胡雪岩氏の数十年にもわたる政界での人生の感慨を歌い上げています。味わいたっぷりの一曲です。
眠れない夜
君のことが浮かんでくる
君は小舟に乗り
雲と霧を通り抜けてやってくる
危険に遭うと
君はいつも助けてくれる
君の愛は僕の心を温める
蘇州好風光(蘇州の良い風景)
「蘇州好風光(蘇州の良い風景)」は中国南東部江蘇省、浙江省一帯で盛んな寄席芸能・評弾に基づいて編曲された歌です。濃厚な蘇州方言の味わいに満ちたこの歌は、蘇州の春夏秋冬の美しい景色と人情を淡々と語り、江南水郷を描いた水墨画のようにゆっくりと展開されていきます。曲のメロディーは、評弾やオーケストラの伴奏などの要素を取り入れた、やんわりとした響きを持っています。蘇州の歌謡曲の定番と見られ、さらに蘇州市の市歌にも選ばれています。中でも評弾の名手・盛小雲さんが蘇州方言で歌ったこの曲は、江南水郷の魅力を存分に伝えています。その歌声は泉のように甘く、きれいで、本当に心を打たれます。
春には杏の花が咲き 雨の中で忙しい茶摘み
夏のハス池の琵琶の音
秋にはモクセイの花が香ばしく
庭には本を読む声
冬にはろうばいの花が咲き
太湖が長江と連なる
扉や窓を開ければ 緑の山と青い水
手元の刺繡は天国を紡ぐ