中国映画を音楽で彩る名作曲家・雷振邦さん(前編)

2022-07-30 21:34:34  CRI

 中国の著名な作曲家の一人、雷振邦さんは作品に少数民族音楽の要素を取り入れるのが得意で、『戦友を懐かしむ』『花はなぜこんなに赤いのか?』など少数民族を題材にした名作映画の挿入歌を手掛けてきました。これらの歌は半世紀を経ても歌い継がれています。中国メロディーでは、今週と来週の2回に分けて、雷振邦さんが生み出した名作映画音楽をご紹介します。

 雷振邦さんは1916年に北京で生まれ、幼い頃から京劇に親しみ、二胡とハーモニカを得意としていました。1939年、東京日本高等音楽学校作曲科に入学し、1943年に卒業し帰国。雷振邦さんは1955年、長春映画制作所に赴き、映画音楽創作の道を歩みました。長春映画制作所では音楽の才能を存分に発揮し、『懐念戦友(戦友を懐かしむ)』『花はなぜこんなに赤いのか?』などを作曲。多くの人に愛されてきました。

戦友を偲ぶ

 1962年3月、映画『冰山上的来客(氷山の来客)』の作曲の任務を受けますと、雷振邦さんはすぐに新疆のパミール高原に赴き、現地の少数民族の音楽に関する素材を収集しました。

 彼は寒冷で酸素不足の厳しい自然環境にもかかわらず、高原の奥深くにある歩哨所をよく訪ねました。ある日、雷振邦さんと案内人が風雪に耐えながら標高4000メートル以上の人跡まれな高山の歩哨所に来て、長年ここに駐屯している兵士たちを見たとき、彼は映画の脚本の重要なシーンを思い出しました。それは兵士たちが敵を撃退するために吹雪の中で奮闘し、死んでも銃を手に握り、彫刻のように凍ったまま歩哨所の前に立っているというシーンです。この時、雷振邦さんにはインスピレーションが湧き出ました。

あぁ 親愛なる戦友

私の演奏や歌を聞くことはもうできない

 そのタジク族らしい感動的なメロディーは、戦友を失った主人公の悲痛な心情を切実に歌い上げていて、多くの人が涙しました。

花はなぜこんなに赤いのか?

 映画『氷山の来客』の撮影期間中、雷振邦さんは映画の挿入歌を作るため、パミール高原の歩哨所のほとんどを踏破しました。ある日、雷振邦さんは歩哨所でタジク族の若い兵士に出会い、その兵士からタジク族の切ない恋の物語と、物語に関連するラブソング「グリピタ」を聴き取りました。

 その感動的な物語と、切ないメロディーに、雷振邦さんは心を打たれてしまいました。彼はすぐにこの民謡をアレンジし、原曲のスピードを適度に落として、はるか遠くに響き渡る空間を演出し、歌の情感を豊かにしました。こうして、中国映画史に残る映画挿入歌『花はなぜこんなに赤いのか?』はパミール高原の眠れぬ夜に生れました。

花はなぜこんなに赤いのか?

なぜこんなに赤いのか?

あーー赤い

燃える火のように赤い

それは純粋な友情と愛情を象徴している

胡蝶の泉の辺

 雷振邦さんは「万能な民族音楽の作曲家」と呼ばれ、タジク族の民謡の特色ある『花はなぜこんなに赤いのか?』やペー族風の映画挿入歌『蝶々泉のほとり』を生み出しました。 

 1959年、別の少数民族を題材とした映画『五朵金花(五人の娘)』の作曲という任務を受けた雷振邦さんは雲南を10回、シーサンパンナを6回訪れ、多くの少数民族の民謡を収集しました。

 雷振邦さんは少数民族の間で流行している男女の歌垣の形式に夢中になり、この形式が生き生きしていて、芸術的な影響力も強いと考えました。そこで、映画の中の男女主人公の会話の一部を男女のデュットで表現することを提案し、作詞者の季康さんがその提案を取り入れ、挿入歌『胡蝶泉辺(胡蝶の泉の辺)』の歌詞を書き上げました。

大理の三月は景色がいい

胡蝶の泉は化粧にいい

蝶が蜜を求めて飛び回り

娘が髪を整えるのは何のため?

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