【観察眼】米国主導のインド太平洋経済枠組みは、経済の衣をまとった地政学的道具

2022-06-13 17:00:05  CRI

 日本の岸田文雄首相は10日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)に出席して基調講演を行い、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた行動計画を策定・推進すると表明した。岸田首相がこの会議で唱えた「自由で開かれたインド太平洋」は、実のところ米国の「インド太平洋戦略」にほかならない。この戦略を実施・推進するため、バイデン米大統領は5月23日午後、日本の東京でインド太平洋経済枠組み(IPEF)の発足を正式に宣言した。この米国主導のインド太平洋経済の枠組みは、実質的には経済の衣をまとった地政学的な道具である。

 インド太平洋経済枠組みには米国、日本、オーストラリア、韓国、インドなど13カ国が含まれ、その経済総量は世界のGDPの4割を占めている。主に半導体や電池などの「サプライチェーンの強靭化」などの内容で協議を進める。このうち半導体は、日米が次世代半導体の開発で協力しており、日米が韓国企業と提携すれば、中国にとって大きな脅威となる。このことからIPEFの狙いの1つが、グローバルなサプライチェーンから中国を排除することにあることがうかがえる。

 近年、インド太平洋地域は世界経済の発展が最も目覚ましく、最も潜在力を持つ地域でもある。日本や韓国などは、中国やASEANとの経済的な結びつきが強く、同じサプライチェーン・産業チェーンの分業システムの中にあり、米国の目標を満たすために、現在の自国にとってより有利な経済の枠組みを放棄するとは考えにくい。現在、米国内は深刻なインフレ危機に見舞われ、米国社会の対立は絶えず深刻化し、国際的な政治信用と通貨信用は急速に失われている。この背景のもと、米国は同盟国が自国の安全保障や経済を米国とより緊密に結びつけることで、EUやアジアの発展を弱体化させる必要に迫られているのかもしれない。短期的には、米国が既存の地域自由貿易協定を新しいインド太平洋経済枠組みに置き換えることを実現する可能性は低いが、ハイテク分野において、米国がサプライチェーンや産業チェーンにおけるアジア太平洋同盟国の統合促進を加速させる可能性を備える必要がある。

 また、伝統的に経済貿易を促進する協定とは異なり、この経済枠組みには明らかな政治的目的がある。経済連携協定の締結は通常、関税の撤廃や引き下げ、輸入制限の緩和などを通じて貿易の拡大を目指す。しかし、IPEFは大きく異なり、関税交渉は除外されている。市場開放を加速させ、輸出拡大に直結する経済枠組みの役割を期待することはできない。インド三大陸社会研究所のビジャイ・プラサード所長は、インドで最も権威ある英字新聞「ザ・ヒンドゥー」のウェブサイトに寄稿し、「インドは米国の『インド太平洋戦略』を慎重に見るべきだ」と主張していた。なぜなら、米政府は新たなインド洋・太平洋戦略に関する複数の報告書や状況の紹介を発表しているが、「自由、公平、互恵的な貿易」についての説明は全くなされていない。これらの文書には、オーストラリア、インド、日本という3つの大国を利用して中国を孤立させようとする米国政府のより深い企みが隠されているからだ。そのため、インド太平洋経済枠組みを「アジア太平洋版のNATO」と痛烈に指摘するアナリストもいる。

 米側がいかに「自由、開放、繁栄のインド太平洋」を作ろうと飾り立てても、同盟国を利用して中国を制圧しようとする真の企みを隠すことはできない。米国は国内の社会経済発展が下押しされる傾向の中で、伝統的な同盟システムを利用して世界の安定的な発展に不利をもたらす可能性がますます大きくなり、その中から利益を得ようとすることも考えられる。アジア・太平洋地域の持続的な繁栄には、地域諸国の団結と協力が必要なのであって、同盟による対抗ではない。(日本語部論説員)

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