【観察眼】歴史の分岐点に立たされる日本に問う

2022-05-25 18:50:25  CRI

 バイデン米大統領は24日、就任後初のアジア歴訪を終えた。ウクライナ情勢やパンデミックなどで不確実性が高まっている世界にとって、今回の訪問は世界情勢、地域情勢、ひいては中日関係にどのような影響を与えるのか。

 ◆世界を分断の方向へと一歩追いやった訪問

 まず、今回のバイデン氏のアジア歴訪には、露骨な狙いがある。それは、韓国と日本を米国の「自由で開かれたインド太平洋戦略」の尖兵(せんぺい)にするとともに、インド太平洋経済枠組み(IPEF)や日米豪印からなるQUAD(クアッド)などの多国間枠組みで陣営化を強め、世界を分断の方向へと一段と追い込むことである。

 経済面では、米国が急ごしらえで提唱したIPEFが23日に東京で発足した。ただ、13か国で、世界GDPの4割を占めることが誇りのこの「経済」枠組みには、関税免除や市場アクセスの緩和などの実質的利益がない。実に不可解である。発表を受け、中国外交部の報道官は「米国は経済問題を政治化、武器化、イデオロギー化し、経済手段で域内諸国に米中のどちら側につくのか立場を表明せよと脅かしていないか」と指摘し、米国に説明を促した。

 軍事面では、QUAD首脳会談後に発表された共同声明で、インド太平洋地域に5年以内に少なくとも500億ドルのインフラ支援と投資を行うことを宣言し、いわゆる「違法漁業」と戦うための「海洋状況把握のためのインド太平洋」を推進することなどを取りまとめた。名指しこそしていないが、矛先が中国に向いていたことは明白である。

 さらに、米韓、日米首脳会談では「拡大抑止」がキーワードになっている。戦後、日本は日米安保条約で米軍に基地を提供することと引き換えに、米国の軍事的保護を受けてきた。しかし、今日に来てみれば、米国が「拡大抑止」を強化する目標は、日本を守ることだけではなく、他国との軍事的対決にある。それによって日本が戦争に巻き込まれる危険性は却って増えていることに、本当に自覚はないのだろうか。

 バイデン政権は中国を米国の「最大の戦略的競争相手」と位置づけ、「力で現状変更」しようとする地域安全保障のリスク要因と認定している。しかし、米国のさまざまな行動が示したように、小さなサークルを作って陣営の対立をあおるやり方こそが、平和で安定した協力的な海洋秩序の構築を真に脅かす存在である。

 ◆日本の一部政治家の「本音」に警戒

 無視できないのは、米国が「自由で開かれたインド太平洋」を旗印にし、陣営化の対立をアジア太平洋に持ち込もうとする中で、日本は先陣を切る役割を果たしている。

 IPEFはまだ具体的な中身も不明確なうえ、中国への対抗色が強いことを知りながら、日本は率先して手を挙げて参加・支持を表明した。市場開放の仕組みがないIPEFが、かくも早く立ち上げ宣言ができたのには、日本の積極的な貢献が大きかったといえる。また、岸田首相はバイデン大統領との会談の中で、「拡大抑止」が揺るぎないものであることを確保するため閣僚レベルを含め、一層緊密な意思疎通を行い、防衛費の相当な増額を確保する決意を表明した。岸田氏への見返りか、バイデン氏からは「改革された国連で、日本の常任理事国入りを支持する」と示した。

 さらに、日米首脳会談後に発表した共同声明でも、中国を名指しして非難する箇所が多く、東・南中国海における中国の合法的権益や、中国の内政である台湾、香港および新疆問題を取り上げて非難していた。おまけに、中国に対する核軍縮の要請まで盛り込んでいる。一方では、米国こそが世界有数の核大国である事実は完全に無視されている。

 IPEF、QUADは米国が陣営を作り、中国に対抗するために編み出した包囲網とするならば、言うまでもなく、日本がその重要な網目に位置付けられている。日本の為政者たちも、その点をしっかり心得ており、決して米国を失望させないよう対応をしてきている。ただし、日本がしかけた侵略戦争の歴史を生きる隣国で暮らす者としては、今、日本が喜んで米国のお先棒を担ぐことの背後に見え隠れする「本音」に警戒せざるを得ない。その本音とは——米国の「自由で開かれたインド太平洋戦略」を追い風に、一歩一歩平和憲法のたがを外し、自身の軍事力拡張に合理的な口実を見つけようとしているのではないか、ということである。

 ◆信頼しあう隣国関係こそが最強の安全保障

 バイデン氏の日本訪問を受け、日本の新聞各紙は大枠その成果を称賛する社説を出している。その中には、数少なくも質疑を呈する声もある。

 24日付けの「朝日新聞」の社説は、「力による対峙(たいじ)を強め、経済安全保障の名の下に、相互依存関係の切り離しを進めるだけでは、平和と安定は保てない。米国の前のめりな姿勢を抑え、対話や信頼醸成の取り組みを交えた共存の道を探ることこそ、中国の隣国である日本の役割だ」と指摘している。同じ日の「東京新聞」の社説は、抑止力の強化・向上が軍拡競争を招きかねないことに懸念を示し、「中国との共存」という本来は疑う必要もない認識を改めて強調した。どちらの問題提起も、日本国民を含め、世界中の平和を愛する人が真摯に考えるべき指摘である。

「永遠の隣人」と称されている中国と日本。第二次世界大戦後の両国関係を振り返ると、50年前の国交正常化により、異なった制度下の国同士でも友好交流関係を築き、共同発展できることの手本を世界に示すことができた。50年この方、日増しに深まる交流の中で両国はいずれも大きな利益を手に入れた。それは単なる経済成長だけでなく、人的・文化交流も盛んになり、両国の人々の心に潤いをもたらしている。多くの日本の有識者からも指摘されたように、安定し、相互に信頼する日中関係こそが日本にとって最も強固で、最もお金のかからない安全保障である。

 国際社会はいま、多国間協力体制が継続するか、陣営対立するかという歴史的な分岐点に立たされている。旧態依然の冷戦志向のお先棒を担ぐのか。それとも戦前の痛ましい教訓をくみ取り、隣国と向かい合って歩み寄り、相互信頼関係の構築に努め、平和発展の道を歩み続けるのか。いまの日本に問いたい。(CRI日本語部論説員)

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