世界最高標高の自動気象観測所設置~中国のチョモランマ科学調査にフォーカス

2022-05-10 16:24:05  CRI

 5月4日、中国の科学調査チームの隊員13人がチョモランマ(エベレスト)に登頂し、標高8830メートルの地点に気象観測装置を設置しました。また、高精度レーダーを利用して山頂の氷と雪の厚さを初めて測定し、氷と雪のサンプルや大気サンプルを採集しました。2017年に中国でスタートしたチョモランマの「健康診断」とも呼ばれる調査ミッションにフォーカスしてみます。


5月4日昼・登頂成功後の記念撮影

■青蔵高原の気象観測の空白を埋める

――標高8830メートルに設置された自動気象観測所とは?

 太陽光パネルから電力を供給し、衛星通信により気温、湿度、風向、風速、太陽放射などの気象情報を計測して伝送できる無人の気象観測装置です。2年間使用できる見込みです。


5月4日12時46分頃、自動気候観測装置を設置する調査チーム(新華社撮影)

――今回はあわせて8つの自動気象観測所が設置されたそうですが……

 はい。中国科学院青蔵高原研究所の科学観測チームは今回、標高5200メートルから8830メートルにかけての8つの地点に自動気象観測装置を設置しました。氷河、凍土、積雪など様々な要素の測量を行うこれらの観測所は、チョモランマのそれぞれの高度における気象の自動観測とデータの伝送を実現しています。

 入手できる実測データは、チョモランマの高高度気象記録の空白を埋める、世界的にも極めて貴重な観測データとなります。その活用が、青蔵高原の生態系保護や、気象予報と防災・減災の能力強化につながることが期待されています。

標高5200メートルにあるベースキャンプ(5月1日、新華社ドローン撮影)

■チョモランマの「健康診断」

――中国では、チョモランマの大規模な科学調査は今回が初めてではないのですか?

 実は、中国によるチョモランマの科学調査は1950年代に始まりました。しかし、当時は経済力や技術力の面での制約があり、調査は小規模なものにとどまりました。また、山頂の観測といえば標高の測量が主で、中腹を流れる氷河の測量はめったに行われていませんでした。その後、1970年代になってから、中国は初めてチョモランマの大規模かつ全面的な科学調査を行いました。そして、2017年から第2回の大規模調査をスタート。今年4月28日に始まった一連の調査も、2017年にスタートしたミッションの一部です。


大気の総合調査に用いられるエアロスタット「極目一号」三型(中国科学院空天信息研究院が自前技術で開発)

――どれくらいの人数で、どんな調査をしているのですか?

 西風とモンスーンの相互作用、アジアの給水塔(青蔵高原及び周辺の高山地帯は地球の第三極、アジアの10数本の大河の水源地で、「アジアの給水塔」とも呼ばれる)の変化、生態系と生物多様性、人類の活動がもたらす影響、地球力学調査など5つのテーマをめぐり、16の科学調査チームが結成され、計270人余りが参加しています。

 具体的には、チョモランマの北麓にある絨布(ロンブク)氷河の厚さ、標高に応じた変化、大気成分のデータの収集を通して、青蔵高原の氷河・水資源の変化をシミュレートし、予測モデルの構築をめざしています。また、温室効果ガス濃度の変化および生態系のカーボンシンク(炭素吸収源)の機能、人類の極限環境への適応に関するデータも収集します。さらに、山頂の氷・雪の厚さの測量のほか、表層の雪のサンプルを採取し、その成分分析も予定されています。このミッションはいわば、現在の技術を最大限に駆使した、チョモランマの「健康診断」です。


ロンブク氷河へ徒歩で向かう「氷河と汚染物調査チーム」(5月1日、新華社撮影)

 ――2017年のミッション開始から、これまでの調査で分かったことは?

 2017年に行った調査の成果は、去年9月に発表されました。主な調査内容は、青蔵高原の最新の隆起、気候の温暖化と湿潤化が「アジアの給水塔」にもたらした影響、青蔵高原に緑が増えたことに潜むリスクなどです。成果発表によりますと、青蔵高原の生態系は改善していますが、それと同時に潜在的なリスクも増えているようです。また、地球温暖化の影響で、「アジアの給水塔」の均衡が崩れ、自然災害の頻発も懸念されています。


4月30日 ベースキャンプでバルーンを飛ばす調査チーム(新華社撮影)

■「アジアの給水塔」に起きた変化を知りたい

――「世界の屋根」「世界第三の極」とも呼ばれる青蔵高原での調査結果が持つ意味とは?

 中国気象科学研究院青蔵高原・極地気象研究所の丁明虎副所長はCMG(チャイナ・メディア・グループ)の取材に対し、青蔵高原の氷河は「アジアの給水塔」を構成する重要な部分だと語っています。この氷河は、東アジア地域から東南アジア地域まで、約20億人に影響を及ぼします。青蔵高原の氷河は気候変動のあおりを受けて1970年から2020年までの間に約17%後退しました。近年、氷河の融解の影響によって災害が増加し、地域の人々にとって極めて大きな課題となっています。

 チョモランマ山頂の気象観測所から伝送されるデータは全世界に公表されます。これにより、世界中の科学者たちが「世界の屋根」の変化に関心を寄せることでしょう。そうして、地球環境の保護のために知恵を出し合うきっかけとなることが期待されています。


CMGのインタビューに答える中国気象科学研究院青蔵高原・極地気象研究所の丁明虎副所長(左)

(構成:王小燕、校正:梅田謙)

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