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北京龍泉寺に見る伝統と現代(上)

2013-08-01 18:47:25     cri    

 ■開かれた寺院作り


龍泉寺境内の風景

 中国では寺院の多くが山中にあるからでしょうか、お寺に行くことを「上山」(山に入る)、お寺を出て人里に行くことを「下山」(山を下りる)と言います。
 取材で「上山」する前に、公務で「下山」していた龍泉寺・監院(住職に代わって寺内の事務を監督する役職)の禅興法師に市内で話を聞きました。
 勤行や公務が忙しいため、禅興法師は外部と連絡する時、電話よりも時間的に融通が利くショートメッセージを使っています。お返事は決して早いほうではありませんが、一通一通、実に丁寧に、分かりやすく対応してくれます。もっとも、龍泉寺では必要の場合を除き、僧侶は原則的に携帯電話を持たず、インターネットの使用も控えるようにしているようです。
 さて、市内の中国仏教協会(西四・広済寺境内)で初対面した禅興法師はたいへん痩せている方で、歩くと袈裟がだぶだぶ揺れるほどでした。しかし、目の輝きと満ち足りた顔の微笑がたいへん印象に残りました。
 「人々に心のケアを提供し、社会に対してポジティブなエネルギーを送り出す寺院を目指し、開かれた寺院作りを心がけています。商業活動と一切関係を断ち、入場料はとらず、仏前に供えるお香も無料で提供しています。飲食と宿泊も、身分証明書さえあれば無料で提供します。何よりも、仏法の修行をしようと思う人に、落ち着いて修行できる場を用意したいのです」
 ポジティブなエネルギー(正能量) 。
 中国でいま、流行語になっているこの言葉が和尚さんの口から実に自然に語られていました。社会に対して使命感を抱いていることを隠さず、日々の活動に取り組んでいるところに、従来の仏教にない新鮮さを感じました。
 「龍泉寺は宗派にこだわらず、仏教のすべての宗派を平等に受け入れ、仏法を唱える同門と見ています。また、仏教を中国の伝統文化の一部分と位置づけており、儒教、道教などの伝統文化も同時に広めています」

■和尚さんだって、日々お忙しい

 禅興法師は龍泉寺の監院という大任についています。住職の学誠大和尚は中国仏教協会筆頭副会長および福建省広化寺や陝西省扶風法門寺の住職も兼任しており、激務で「毎日2~3時間しか寝ない」そうです。龍泉寺にいない時も多く、そのため、住職が留守中でも円滑に運営できる管理体制が整っています。
 具体的には、住職の下に、書記5人(寺院の大事を決める議決権を有す)、監院5人(具体的な事務を主管、個別の役割分担あり)と一般僧侶からなるピラミッド式の体制です。
 ところで、禅興法師(39歳)は2002年に清華大学の流体力学専攻で博士号を取得した後、卒業と共に出家しました。仏教との縁は博士課程後期、大学の仏教サークルへの参加でした。
 「博士論文のテーマ選定をめぐって指導教官と齟齬が生じ、悩んでいました。その時、仏教と出会い、科学は外部の学問に過ぎず、人間の心を重んじる仏法こそ、世の中のすべてを解釈できる最高の学問だと思いました。それまでの自分は勉強の中に楽しみを求めていましたが、本当の楽しさは内心にしか求めることができないものです。悩むのも人のせいではなく、自分の心がそうさせたのです。そう思えるようになってから、指導教官との関係も緩和し、人生に新天地が開けました」
 エリートコースをあきらめ、出家を決意した経緯を淡々と振り返ってくれました。
 この日の禅興法師は、中国仏教協会に招集され朝から下山。市内の公務が終了して私たちとの打合せ場所に戻ってきたのは、夕方の5時半でした。一時間ほどインタビューに付き合った後、昼間訪問先の寺院でもらった"包子"(バオズ)を夕食として食べ、一時間あまり車に乗って山に戻っていきました。毎日、朝4時起きの修行生活をしている僧侶にとって、長い1日だったに違いありません。しかし、「今は本当に楽しい毎日です」といつも笑みを浮かべているその顔は、実に満ち足りた表情でした。
                                                                                
                          (つづく)(文:王小燕 撮影:胡徳勝)
 

 

 


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