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役者・神田さち子さん(下)

2012-05-21 19:49:56     cri    

来場者の感想から

上演終了後、観客からの花束を受け取る神田さん(北京外大)

大学院生:
 たいへん心打たれました。「おばあちゃん」は自分が加害者でもあったことへの反省、そして、生まれ故郷への強い思いを抱いています。その気持ちがとても良く伝わってきました。運命に翻弄された女の一生って、本当に大変だったな、と心に沁みるものがありました。

大学院生:
 中国に残留している日本人の知られざる一面を再現されていました。(中国人は)日本人がもたらした傷のことを良く知っているため、分別なしに日本人を恨んでいる面があると思いますが、歴史の持つ様々な面にも目を向ける必要があると思えました。
 この芝居は、戦争が中国人にもたらした傷のみならず、日本人自身に与えた傷も表現しており、良い視点だったと思います。

小学生:
 とてもたいへんな人生でした。おばあちゃんはとても芯の強い人です。このような話は今日、初めて知りました。

北京在住日本人(女性):
 戦時中、犠牲となって置いて行かれて、想像を超える苦労をされた日本人女性の一生でした。そういう過去を持った方が本当にたくさんいたことを知り、やりきれない気持ちでした。それと、お一人での劇を通して、歴史を伝えようとする女優・神田さんの情熱にも感動しました。最後のご挨拶の時に、私も涙が出ました。

 

来場者と交流する神田さん(北京外大)

北京在住の日本生まれの華僑(男性):
 こういう内容は今日、劇を通して初めて知りました。心が痛みます。苦労の中で、よく今まで生きてきたなというか。今日の劇の内容は私の心に刻まれ、一生消えません。
 たくさん犠牲になってきた人たちがいましたが、神田さんはそれを伝えようと一人で頑張っていらっしゃっいます。  
 実は、「一人の劇」と聞いたもんですから、一人で何の劇をするのだろうと思っていましたが、見事に歴史的な内容を伝えていました。主人公が苦労する度、私も涙を流していました。本当に感動しました。

留日同学会・娄衛東理事
 戦争に対する反省と懺悔は、その民族に新生をもたらすことができ、また、全世界の人々の信頼と尊重を得ることができます。一方、寛容そして寛大に許すことは、我々が戦争の陰から歩き出し、心の重荷から解放され、一層美しい新生活を求めることにつながります。
 軍国主義政策は日本の国民にも災害と苦痛をもたらしました。神田さち子さんは日本の一般市民の立場から、十数年にわたってこの芝居を繰り返して上演してきました。か細そうに見える一般市民の力をもって、戦争反対の声をあげています。
 戦争に勝ち負けはなく、戦争を仕掛けた国にせよ、仕掛けられて被害を受けた国にせよ、結局は被害を受けるのは一般国民なのです。戦争こそ人類の幸せな生活をめちゃくちゃにする大きな禍であることを神田さんの芝居によって思い知らされました。そして、中日両国が痛ましい過去を忘れないことこそ、幸せな未来を有することができるということも。

【あらすじ】「帰ってきたおばあちゃん」

 戦時中、満蒙開拓に駆り出された日本人女性・鈴木春代は敗戦後、引揚の生き地獄を逃げ惑った挙句に、足手まといになるからと夫に命令され自らの手で幼い子どもの首に手をかけた。そうまでして逃げた春代だったが匪賊の乱暴を受けてしまう。夫は傷ついた春代を見捨て一人で逃げてしまう。力尽きて倒れていたところを心優しい中国人に救われ、助産婦として中国社会を生き抜くことになる。が、今度は中国の政治運動が春代を襲う。再び家族はバラバラになり、自らも文革の嵐でつるし上げにされしまう。激動の時代の波にのまれながら戦争とは何か、そして自らの加害者としての意識、被害者としての意識が深まっていく。

  

  

 文革末期になり、中日の国交正常化も実現すると、再び望郷の念に駆られるようになる春代。しかし文革の迫害で病弱になった夫とその家族の世話や家計のやりくりに追われ帰国はかなわなかった。80歳になった春代は家族の理解とサポートもあり、ボランティアの助けでやっと故郷の鹿児島・桜島に60年ぶりに降り立った。

 

 日本に向かって旅立つ前、文革で母親が日本人だからひどい目に遭わされていた娘は「お母さん、忘れないでね。中国こそあなたの国なのよ」とやさしい声をかける。すっかり年老いた春代は「すべての苦労は無駄でなかった、苦労は必ず報われる」と悟る。
 桜島を離れる前に、ずっと探していた元夫から手紙が届く。その手紙は自分のことを見捨てた夫、そして祖国との和解だった。春代は過去を許し、元夫とその家族が元気に暮らしていくよう祈った。そして「見捨てられた自分のことをダイヤモンドのように、大事にしてくれている子どもがいる中国」に帰り、「これからは中国人として誇りを持って生きていく」ことを改めて決意したのだった。

 (聞き手・構成:王小燕、写真:Yan、Keiko)

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