ナビゲーター　黄競

　8月23日は24節気の一つ・処暑（しょしょ）です。暦の上では暑さが収まるころとされています。みなさん、夏の疲れをゆっくりと癒していきましょう。中国メロディーは今週も引き続き、中国各地の少数民族の風俗習慣や民族音楽をご紹介しました。今回は中国西北部・青海省の少数民族の音楽です。

花児の故郷―青海省

　青海省は中国西部地区に位置し、大部分の面積は「世界の屋根」と言われる青海・チベット高原にあります。青海省の標高は平均3000メートルで、長江、黄河、 瀾滄江の「三本の河の源」と称されています。こんな、山も川も美しい青海省にはチベット族やホイ族、サラ族など多くの民族が暮らしています。地元の民謡や小唄が非常に豊富で、特に、地元の漢族、回族、トンシャン族の間で流行している「花児（花）」と呼ばれる民謡は地元の各民族の人々に喜ばれています。

　毎年、麦の穂が成熟し、見渡す限り黄金色となる菜の花の季節が来るたびに、青海省の各地で盛大な「花儿会（花の会）」すなわち「歌比べ」が行われます。地元の各民族の老若男女は鮮やかな民族衣装を身にまとい、この年に一回の「花の会（歌比べ）」に参加します。各地から集まってきた「うた自慢」の人たちが即興で歌声を披露します。会場は笑い声や拍手喝采が絶えず、１日中盛り上がります。

楽しい「雪頓節」　チベット芝居祭

　毎年8月中旬、青海省のチベット族の人々はチベット仏教の重要な祝日・ショトン祭り（雪頓節）を祝います。"チベット芝居祭り"とも呼ばれるこの祭りは夏安居(ゲアンゴ)と呼ばれる夏篭り修業の間に、僧侶たちが芝居を演じて魔物を喜ばせ、魔物が悪さをするのを鎮めたことから始まりました。祭りの期間、青海省とチベット自治区ではチベット芝居など多彩なショーが行われます。

美しいサラール族民謡

　サラール族はチベット高原と黄土高原の境に位置する青海省循化サラール族自治県に暮らしています。サラール族の祖先は今から800年前に中央アジアのサマルハン地域から移住してきたそうです。滔々と流れる黄河と雄大な積石雪山は、サラール族の明るくて楽観的な民族性を育てました。また、長い間、漢民族やチベット族などの多くの民族と融合し、サラール族の多元化した民族文化を生み出しました。特に、その民謡は非常に美しいです。番組の中で「西北花民謡の王」と呼ばれる朱仲禄さんと若手歌手・張朶児さんが唄ったサラール族の代表的な民謡「白牡丹睡着着哩（白い牡丹が眠っているよ）」を紹介しました。

　番組の中でお送りした曲

　1曲目　花児与少年（花と少年）

　この曲は青海省の代表的な民謡で、青海省の民謡を元にアレンジしたラブソングです。青海高原の風光明媚な景色と若い男女の美しい恋を描きました。その軽快なリズムと美しいメロディーは花のような娘たちが春の唄を歌いながらやってくる情景を表しました。彼女たちの歌声は若者たちをひきつけます。

　歌詞

　山の中でいちばん美しいのは、この大草原

　この大草原は、緑の絨毯をしきつめたよう

　いちばん素敵といえば、あの少年

　あの少年は、春の花で一番美しい紅牡丹のよう

　あの少年より美しいものはない

　2曲目　在那遥遠的地方（草原情歌）

　この曲は、作曲家・王洛賓さんが1941年に青海省チベット族住居地区を訪れた時、地元の民謡と自身の恋愛体験を基に作りました。今では中国全土はもとより、世界中の人々に愛されて唄われています。

　歌詞は

　あの草原の彼方に良い娘が居る

　そのテントを通り過ぎる人　誰でも振り返る

　バラ色の笑顔は太陽のよう

　美しい瞳はさやかな月のよう

　3曲目　白牡丹睡着着哩（白い牡丹が眠っているよ）

　番組の中ではこの曲の朱仲禄さんバージョンと張朶児さんバージョンの二つをお送りしました。

　「西北花民謡の王」と呼ばれる朱仲禄さんのバージョンは、朱さんが80歳の時に歌ったものですが、その抑揚に富んだ、心を揺さぶる歌声から高原民謡の独特な魅力を感じられます。

　そして張朶児さんバージョンでは、彼女の叙情的な歌声で恋人への思いをうまく表現しました。特に、曲の中の高音部のトリル(顫音)からチベット族民謡の特徴を感じとることができます。

　歌詞

　白い牡丹が白く輝いて

　赤い牡丹が赤く咲いている

　僕はあの大きな瞳の娘に恋をしている。

　カーテンを開けて部屋に入ってみると、

　僕の白い牡丹が眠っているよ。

　僕はあの大きな瞳の娘に恋をしている。

　4曲目　阿哥的白牡丹(兄さんのボタン)

　この曲はドンシャン族の民謡を元にアレンジしたものです。若い娘の兄さんへの愛情を描いています。