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亡霊のいたずら

2011-12-08 12:48:16     cri    

 「酒のおかげ」(李重)

 唐の大中五年、酒好きな李重は、いくらかへまをして四十幾つで検校(けんぎょう)の役を解かれ、山西河東郡に住んでいた。つまり、ここの役人となったのだ。

ある日、李重は具合が悪くなり、数日後にはひどくなった。そこで下男に、自分は外へ出ることも出来なくなったので、屋敷の門を閉めさせた。

 と、その夜、誰もいないはずの庭に物音が聞こえたので、部屋の戸をあけてみると、赤い服をまとった役人らしき男が、白い服のものを連れ部屋に来る。そこで部屋の明かりをつけると、なんと親しき友である河西県の県令蔡行己だったので、こんなときにと驚いて中に招いた。そして二人を座らせ、来たわけを聞こうとしたが、急に蔡行己の背丈が伸び始め、手足や顔大きくなったので、びっくりしながらよーく見ると相手は蔡行己ではなくなった。そこで李重がびくびくしながらいう。

 「誰か知らんが、私はひどい病にかかり、まもなくあの世にいく」

 これを聞いた相手は、「いや、あんたの病はもうすぐよくなる」といい、横に座っていた白い服の男をみて、これは自分の弟で八卦占いが得意だという。これに李重は返すことばがないので、占わせることになった。その白い服の男は懐から木で作った猿を出して李重の床に置くと、猿は動き出して飛び回り、しばらくして止まった。そこで白い服の男は目を丸くしている李重にいう。

 「わかりましたよ。あなたの病は心配いりません。あなたは六十二歳まで生きられます。が、それまで苦労しますがね」

 これに李重は喜び、「酒を飲みますか?」と聞くので、その男は「いいでしょう」と答えた。こうして李重は下男を起こして酒肴を運ばせた。そして杯に酒を注ごうとすると、白い服の男は、自分は杯を持ってきたといい、懐からそれを取り出した。みるときらきら光っていてどうも銀みたいだ。

 「ほほ、たいした杯ですな」と李重が酒を注ぐと、その杯は勝手に揺れだした。李重がよーくみると、杯は紙で作ってあった。こうして三人は飲みだしたが、相手は二杯しか飲まない。

 「ではこれで失礼する」と白い服の男はかの杯を懐にしまうと、はじめは親友の蔡行己だった赤い服の男がいった。

 「いいかね。あんた病がよくなったあとは、酒を止めなさい。さもないとまたつまらんことが起こる」

 「え?つまらんこと?」と李重が聞いたが、二人の男はこれには答えず、庭に出て行き、ふと消えた。

 これに李重はきょとんとした。

 「なんだ?いったい何者だ?」と部屋に帰ったが、なんとあの二人が飲んだはずの酒は床の前の地べたに撒いてあった。

 「あれ?あの二人は化け物か」と李重はしばらく考え込んでいたあと、下男を呼んで徳利や杯などを下げさせ、自分は寝た。

 さて、数日後に李重の病はすっきりよくなった。それで好きな酒を飲もうとしてかの赤い服の男の「病がよくなったあとは、酒は止めなさい。さもないとまたつまらんことが起こる」ということばを思い出したが、なんということはないとあざ笑い、また飲み始めた。

 それから半年が過ぎたとき、李重は、へまをやらかしていないのに、酒を飲みすぎだと上役にいわれ、それまでの職を解かれ、なんと普通の下役人に落とされたワイ。ふん!

 最後は「王坤という男」です。やはり「宣室志」という本からです。

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