さて、翌日はまだ暗いうちに汪おばさんは起きて二羽の鵞鳥を捕まえ、麻の縄で縛り、しっかり抱いて息子に声をかけて出かけた。そして夜が明けたときに太平集という町に着いた。すると、あるオヤジが声をかけてきた。
「おう!あんた子狐庄の汪おばさんじゃないかい?」
「ああ。あんた誰だい?私になんか用かい?」
「おお、わしはそこの居酒屋の主で包をいうもんだ。いや、汪おばさんと会うのは今が初めてだ」
「というと」
「実はあんたんちの隣の柱子という若いのは、わしの甥でね」
「ああ。隣の柱子かい。あんたその叔父さんだね」
「そうだ」
「で、その叔父さんが・・・・」
「昨日の夜、柱子はうちに来て、あんたが都に皇帝をたずねに行くと聞いたんだ」
「ああ。そのつもりだよ」
「そこで、今朝はやくからここであんたの来るのを待っていたというわけさ」
「私に何の用かね?」
「こんなこといっちゃあなんだが。わしの造った酒は評判がいい。おかげで商いはうまくいってるんだ」
「酒?ということは・・」
「そう。汪おばさんよ。わしの造った酒を皇帝さまに届けてくれないか」
「え?それはいいけど・どうして?」
「いや、聞くところによると、あんたの義理の息子の皇帝さまは、貧しかったときのことを忘れていないというじゃないか」
「そうだよ。だからむかし面倒を見たこの私を都に呼んだんだ」
「偉いねえ。わしはそこを見込んで自分の酒を飲んでもらおうと思ったんだ」
「そうかい。そういうわけなら私が届けよう」
「すまねえな。じゃあ、これが酒、ついでに少ないが路銀も少し渡しておこう」
「路銀なんていらないよ」
「ま、そういわずに。わしの頼みごとを引き受けてくれたんだから、ただじゃあすまねえよ」
「そいかい?じゃあもらっとくか。助かるよ」
というわけで、汪おばさんは頼み物の、蓋がしてある徳利を腰にぶら下げ、路銀を受け取り旅路を急いだ。
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