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「爺さんから借りた筆」

2011-11-10 11:37:36     cri    

 さて、その数ヵ月後、この県の県令が廉広の絵描きの腕を知り、また、どこから耳に入れたのか、廉広が仙人から筆を借りたことを知り、屋敷に来るよう言いつけた。相手が県令とあっては行かなければひどい目にあうと廉広は覚悟して筆を懐に入れてその屋敷に向かった。県令は一席設けて待っていた。そして酒と肴を勧めながら、かの筆のことを聞く。廉広のほうは、筆は持っているが、描いたものが動くとはうそだと答える。しかし、県令はそんなことはかまわず、その筆で、鎧兜をまとった兵士を描いてくれと一心に頼む。そのうちに首を縦に振らないと今日は家に帰さないと脅かし始めたので、廉広も怖くなり、しぶしぶと筆を取り出し、応接間の白い壁に言われたとおりの兵士を数十描いた。ちょうどそのとき、この県令の友人の役人が来た。これを見た役人はたいそううらやましがり、翌々日に同じように廉広を自分の屋敷に呼び、今度は半分命ずる形で、廉広に同じように鎧兜を身につけた兵士を応接間の壁に多く描かせた。

 こうしてその日の夜は、喜んだ役人の屋敷に泊めてもらったが、夜半になって騒ぎが起きた。その物音に目覚めた廉広が、慌てて応接間にきて見ると、そこでは役人と屋敷のものが明かりを持ってきていて、なんと多くの小人が壁の上で殺し合いをしていた。

「うわ!どういうことだ!それに殺し合いの相手はかの県令の屋敷で描いた兵士たちじゃないか!」と廉広はおったまげた。

それはものすごく、殺しあいの叫び声と血飛沫、それに埃などで、応接間はめちゃくちゃ。慌てた役人は屋敷のものに何とか壁の絵をもみ消させた。もちろん、廉広自身はそのまま、屋敷を抜け出して逃げて帰った。

 さて、このことは、県令たちが自分が廉広に頼んで描いてもらったものが騒ぎを起こしたので、廉広にはお咎めはなかったが、怖くなった彼は下ヒ県の町に移り住んだ。ところが、この県の金持ちはかの騒ぎをどこからか聞きだし、昼だというのいやがる廉広を屋敷に呼び一席設けた。

 「廉広さん。ことは聞いたぞや。あんたはすばらしい筆をもっているそうではないか、どうじゃ、わしはかの県令たちのように鎧兜をまとった兵士などはいらん。わしは辰年じゃから。竜の絵を頼む」

 これに廉広は、かの役人の応接間で起きたことを詳しく話したところ、この金持ちは、なにがどうしても竜の絵を描いてほしいという。それに金を払うからと必死に頼んだ。このとき廉広は酒には強いほうだが、かなり飲まされ気が緩んでいたので、やがて大きな紙に竜の絵を書いた。喜んだ金持ちは早速その紙を応接間の壁に貼ったので、廉広は金持ちと一緒に飲みながら絵を楽しんでいたが、どうしたことが急に絵がゆれだし、応接間の中に雲が湧き出し、絵の中の竜が外に出て庭から空に飛んでいった。このとき空には黒雲が立ちこめ、大風が吹き出し,竜は上に下に舞い始めた。すると雨が降り出し、それは瞬く間に大雨となり、竜が姿を消した後も振り続けたので、川水はあふれ出しそうになった。これにこの県の県令は、大水を防ぐため多くの人を使い、また竜を描いた廉広を妖術を使って災いをもたらしたと役所にひっとらえた。

 もちろん、廉広は自分が妖術使いだとは認めない。これに県令は怒り、廉広を死罪にして牢獄に閉じ込めた。

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