では、次のお話です。少数民族ホーチョ族に伝わる「天の川の守り神」です。ホーチョ族は主に中国は東北地方の黒竜江省に集まりすんでいます。
「天の川の守り神」
いつのことだったろうか。あるところにウサハトという少年が母親と二人で暮していた。どうしたことか、ある日、母親が起き上がれなくなったのでウサハトは早速巫女を呼び、病を治してくれと頼んだ。巫女はその日、母親の病を見た後、ウサハトを外に連れて行きいう。
「お前の母さんの病は重いよ」
「ええ?そんな!」
「でも、あるものを母さんに食べさせられれば、助かるかもしれないから」
「そ、それはいったいなんですか?何でもしますからいってください」
「お前は親孝行者だから、そういうと思ったよ」
「で。それはなんですか?いったいどこにあるのですか?」
「それはね。それは魚で天の川にいるんだよ」
「え?あの高い空に流れる天の川ですか?」
「そう、お前がその魚を取ってきて母さんに食べさせれば、母さんの病はよくなるが、そうでなけでは母さんは危ないね」
「おいらはその魚をきっととってきます!でも、高い空を流れる天の川へどうやっていくのですか?」
「それは、お前が一艘の舟に乗り、目をつぶれば、私が息を吹いて舟を天に送ってやるよ」
これを聞いたウハサトは、急いで紐のついたヤスを持ってきて小さな舟にのり、目をつぶった。そこで巫女は息を吹きはじめ、ウハサトは耳元で誰かが大きな息をした声を聞き、強い風が出てきて、舟はなんとゆっくり宙に浮き、天に昇り始めた。やがて風も止んだのでウハサトは目を開けてみた。すると、いつの間にか舟は天の川の岸辺に着いていた。そこには白いひげをしたじいさんがいて、ウハサトに聞く。
「なんじゃい。ウハサト、こんな遠いところに何をしに来た?」
これにウハサトは驚いた。
「おじいさん、何でおいらの名前を知っているの?」
「そんなことはどうもいい」
「そうか。実はおじいさん、おいらのかあちゃんがひどい病にかかって、天の川にいる魚を食べないと死んでしまうというから、その魚を捕まえに来たんだよ」
じいさんはこれにうなずき、「お前は親孝行者よ。危ないのを犯してここのくるんだからな」
「おじいさん、その魚はどこにいるの?」
「ここから遠くないところに川が三つまたになっている。そこに多くの魚がいるぞ」
「わかった。ありがとう」
ウハサトはこういうと、すぐ舟を漕いでその場所に来た。するとそこは流れの静かなところだったが、ウハサトはヤスを振りかざし、力いっぱい川の中を刺した。すると、水の中で何かが飛び跳ねたので、ウハサトはヤスについている紐を引っ張ったところ、なんと大きな金のうろこをした鯉が水から飛び出した。そこでウサハトはいち早く用意してきた袋にこの鯉を入れて口を結んだ。そしてホクホク顔でかのじいさんのところに戻った。
「おじいさん、捕まえたよ。大きな金のうろこの鯉をさ!」
「よかったな!」
「でも、おいらはどうやって下界に戻るの。かあちゃんが待っているというのに」
「安心しろ!このわしが送ってやる。さ、舟に乗って目をつぶりなさい」
こういわれてウハサトは言われたとおりに目をつぶると、また大きな息をする音が聞こえ、強い風が吹き、舟は揺れ始め、やがてゴトンという音がして止まった。ウハサトが目を開けるとそこは家の近くだったので、早速魚を持ち帰り、寝込んでいる母親に「かあちゃん、ただいま!いま病を治せる魚を料理するから」と煮魚を作り始め、それを母親に食べさせた。すると母親の病が治り始めた。
しかし、どうしたことか、母親は一年後にまた病に倒れ、とうとう亡くなってしまった。悲しんだウハサトは数日泣き続け、仕方がないので母親を葬ったあと気が抜けたように日を送っていた。そのうちにまた天の川に行きたくなり、その考えは強くなる一方。そこである日、ウハサトはかの巫女を探し、もう一度天の川に行かせてくれと一生懸命頼んだ。これに巫女も折れ、とうとう、その次の日にこの前と同じ方法でウハサトを天の川に向かわせた。
こちら、あの白いひげのじいさん。ウハサトがまたきたので大喜び。
「ウハサトや!お前を待っておったのだぞ。わしはもう年じゃ。お前はここに残ってわしの変わりに天の川を守ってくれ」
じいさんは、こういうと、ウハサトがこれに答える前に、どこかへ行ってしまったとさ!
こうしてウハサトは天の川に残ったが、今の天の川で一番光る星が天の川の守り神ウハサトだという。
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