中国語の「結び」という言葉には、力、調和など情感にあふれるニュアンスがあり、「団結」「夫婦の契りを結ぶ」など、団らん・親密・暖かい人間関係などを表すときによく使われる。
先祖たちの生活の中でも「結び」は非常に重要な役割を果たしてきた。周口店の北京原人出土地から掘り出された骨針や飾り物からも、「結び」が旧石器時代すでに先祖たちの生活で利用されていたことが推測される。また、文字のない時代のコミュニケーションの手段として、あるいは記憶のための記号としても、「結び」によって物事を記録する「結縄記事」が使用されていた。
中国装飾結びの歴史は、遠く「漢」の時代までさかのぼることができる。漢の時代には、特に「双銭結」(あわじ結び)が頻繁に使われていたようだ。またそれに類似する「ボタン結び」も、近年発掘された漢代の壁画の中から発見されている。この種の装飾結びが、現在のいわゆる中国結びの源流である。
二千年来の結び方の歴氏をたどってみると、初期の頃は単純な結び方しか使われていなかったが、のちに結び目を上から下へとつなぎ合せた装飾用の結び方が生まれ、「清」の時代にはいくつかの単結びが左から右へ、上から下へと連なる、変化に富んだ美しい装飾品へと発展した。
中国結びは非常に複雑な結芸であり、その綿密な構造はたいてい立体的な二つの面の組み合せからなっている。物を縛るだけでなく、掛けたときにも形がくずれないような工夫も施されている。また、不必要な糸先を隠し、装飾用に玉や石をはめ込んで美観を増しているものもある。中国結びの美しさは、その複雑な線の変化だけでなく、結び目の周囲にめぐらされた耳翼にも隠されている。耳翼は結び目に密度の濃淡を与えるもので、それはまさに中国の水墨画にあるような詩的な情景を思わせる。さらに耳翼の上にたくさんの小さな結び目を施しているものもあり、それを伸ばしたりして変化をつけることができる。このような創作性は、中国結びの醍醐味となる重要なアクセントである。
中国結びの作品はよく「福寿双全」(幸福・長寿)、「万事如意」(万事が順調に運ぶように)、「吉慶有余」(喜び事があるように)などと名づけられており、人々の幸せな生活への憧れが込められている。
ここ十数年、一時衰えを見せた中国伝統の結芸は、中国だけでなく日本、韓国、東南アジアでも研究が進み、人々に愛用されるようになった。
《縄結芸術》は中国結芸の熱心な研究者ーー李立芳女史の著書で、中国結芸の歴史と現状から中国結びに必要な材料・道具、結び方まで、詳しく紹介している。ここでは、《縄結芸術》にも掲載された作品の写真のほか、李立芳女史の最近の作品を収録した。
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