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皇帝の扇子

2009-10-20 13:38:05     cri    


















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 今日のこの時間は清の時代の大学士で、三代の皇帝に仕えた元老の張玉書にまつわるお話しをご紹介しましょう。

 題して「皇帝の扇子」です。

 「皇帝の扇子」

 時は清の時代。ある年、乾隆帝はわずかに供を連れて私服で長江流域にある鎮江という町にやってきた。

 「うん。この鎮江もいいところじゃのう。おお。思い出した、ここにはかの老臣の張玉書が隠居して住んでおると聞いたな。では今度は張玉書に鎮江を案内してもらおう」

 ということになり、張玉書の屋敷を捜し当て、当の張玉書をつれてくるよう供に命じて自分は宿に戻った。

 しばらくして供が歳はとったがまだ元気そうな張玉書を連れてきた。宿の部屋には乾隆帝と二人の供だけしかいないのを確かめると、慌てて跪く。

 「これはこれは、皇帝さま。またお忍びでござりますか。お元気なお姿。よろこんでおりますぞ」

 「久しぶりだのう!まあ、立ってそこに座れ。ここは都の宮殿ではない」

 「はは。ありがたき幸せ」

 「どうじゃ。隠居したあと元気にしておるか」

 「おかげさまで、老後を楽しんでおりまっする。で、皇帝さま、私めを呼ばれた御用とは?」

 「そちが元気なので、鎮江を案内してもらおうと思ってのう。どうかな」

 「それはそれは。この上にもない幸せ。お供いたしまする」

 「すまんのう。では朕の身分は伏せておくのじゃから、外では無礼講じゃ」

 「かしこまりました」

 こうして乾隆帝は張玉書だけを連れた出かけるという。供の者がかなり心配したが、当の乾隆帝は自分はいくらか武術の心得があるといって聞かなかった。で、二人は、その日は鎮江のにぎやかのところを見て回り、翌日はなんと横丁やお寺などにいった。こうして三日目は乾隆帝が郊外に行くというので、二人はゆっくりと歩き、鎮江の景色を楽しんだ。

 こうして昼ごろになった。そこはある村で、数十の農家がある。かなり歩き疲れも出てきて喉も渇いた。が、あたりには飯屋などはない。そこで二人は近くの農家の庭に入り、張玉書が声をかけた。

 「ああ、すまんが誰かおるか?」

 すると、中から若い女子が出てきて、金持ちでありそうな二人を見て少し怖気付き「なんか用ですか」という。

 「いや。散歩がてらにここまで来て喉が渇いたのでお茶でも飲ましてもらおうと思ってな」

 これを聞いた女子は、どうもこの農家の妻らしく、やってきた二人は善人だとみたのか、汚い家だけどと言ってさっそく二人を中にいれ、釜で沸かしたお湯を冷まして二人に出した。もちろん、茶碗は安物だが、乾隆帝と張玉書はなんとも思わずそれを飲み始めた。喉が渇いていたので白湯でもうまい。

 「うん、うん。うまいのう。もういっぱいもらえるか?」と乾隆帝がいうと妻は茶碗に白湯を注いだ。こうしてのどの渇きを潤した乾隆帝だか、今度は腹の虫が鳴り出した。そこで乾隆帝は、自分の腹の虫の声を耳にして微笑んでいる張玉書を横目でにらんだあと、農家の妻にいいだす。

 「実は、朕、いやちょっと腹が減ってな。何でもいいから食わしてくれんか?」

 これを聞いた農家の妻、「うちは貧乏で何もありませんけど、まずいものでいいですかね」と聞く。

 張玉書がいう。

 「大丈夫じゃ。この方は何でも食べられる。どんなものでもいいから早く出して食べさしてくれ。これからまだ用事があるのでな」

 こうして農家の妻は、米のお粥、小麦粉を水でこねて丸くし火で炙ったものと漬物を出した。これらは粗末なものだが、腹が減って仕方なかった乾隆帝は、うまそうな香りを嗅いでから、さっそく箸を取り、張玉書にかまわず食べ始める。

 「ウン!うまい!うまい!うまいのう!」

 これに張玉書もうなずきながら箸を運ぶ。やがて二人は出されたものをきれいに食べてしまった。

 「ふー!食べた食べた!うまかったのう!ところで、その方はなんと申す」

 「私ですか?私は春花といいます」

 乾隆帝は「春花とな」といってから張玉書のみて「いい名前じゃ。それに正直者じゃ。ごくろうだったな」という。

 そこで張玉書はふざけて「どうです?旦那さま。この春花を義理の娘にしては?」

 「うん?そうじゃな」と乾隆帝は正直な女子がうまいものを食わしてくれたのでうれしかったのか、すぐに首を縦に振った。

 そこで張玉書が「そうとなったからには、何かの証となるものを渡さなければなりますまい」という。そこで乾隆帝は懐などを探ったがなにもない。

 「いかん!」とつぶやいた乾隆帝、仕方なく持っていた扇子を春花に渡しながらいう。

 「この扇子はたいしたものではないが、これから何か起きたらこれをもって町にこの張の老人を訪ねに行くといい」

 こちら春花は、つまらないもの出して嫌われるかと思っていたのが、自分を義理の娘とし、さらに立派な扇子までくれたのだからびっくり。そこで恐る恐る聞いてみた。

 「では。こちらのおじいさまのお宅はどちらでございますか?」

 「ああ。わしの家か。町の南通りに黒い門のついた屋敷があり、門前には二匹の石の獅子が置いてある。わかったのう?何かあったら訪ねてこい」

 こういって乾隆帝と張玉書は腰を上げてどこかに行ってしまった。

 さて、この春花の夫は吉発といい、働き者であり野良仕事が得意で、その上に大の力持ち。なんと数百斤もある穀物を天秤棒で軽々とかついで走るように歩けるという。

 と、その後のある日、吉発はいつものように天秤棒で、紐でくくった薪を担いで町に来て、それを金に換えものを買おうとしていた。しかし、その日は縁日だったせいか、町ではかなりの人出で、重い物を担いでいた吉発の天秤棒の一方の紐がなんとぶっつりと切れてしまい、その勢いで天秤棒の片方がすごい勢いで吉発のうしろを歩いていた男の頭にあたり、男はその場でぶっ倒れて気をうしなった。驚いた吉発は慌てて男を医者のところに運んだが、なんと、当たり所が悪かったのか、男は息を吹き返すことはできなかった。

 さあ大変。人殺しだと吉発についてきた数人の野次馬が叫びだし、吉発は役人に連れて行かれ、県令の前に引き出され、人殺しの罪で牢獄にぶち込まれ、ただ、死刑を待つばかりとなってしまった。

 これを知った妻の春花はびっくり仰天。孤児だった吉発の嫁となり、まだ子供もいなかったので自分は一人ぼっち。こうして大声で泣き出したが、親切なとなりの張姉さんたちがこれを聞いてすぐに来てくれ春花を慰めた。そのうちに張姉さんが春花が言ったことを思い出した。

 「ねえ。春花、あんたいつか言ってたね。金持ちらしい二人がきて、飯を食わしてもらったお礼に立派な扇子をもらい、もし何か起こったらその扇子を持って、町に住んでいる張とか何とか言う人を訪ねに来るように言ってくれたとね。今ではほかの方法はないし、その人を訪ねに行ったら何とかなるかもしれないよ」

 この話に春花はすぐに大事にしまっておいたかの扇子を箪笥の奥から取り出し、張姉さんと一緒に町に行った。そしてやっとのことで町の南通りに黒い門のついた屋敷をみつけ、門前には二匹の石の獅子が置いてるのをみて、恐る恐る門を叩いた。

 すると門が開き、門番らしきものが怖い顔して出てきた。そこで春花は屋敷の主さまに会わしてくれというと、門番は一目で農民だとわかる春花と一緒にきた張姉さんを睨み、「お前らが、ご主人さまにあいたいだと?」という。そこで春花は、あの時もらった扇子をとりだし、これを見せればわかるというので門番が扇子を受け取ってみた。なんと、扇子には竜が描いてありそれも立派なものだ。そこで門番が屋敷の執事を呼んで扇子を見せたところ、執事はこれを見て驚き、慌てて主の張玉書に知らせた。

 こちら書斎で本を読んでいた張玉書、これを知り扇子を見ると、あのときの扇子に間違いないので、「大事な客だ。応接間に通せ」と命じた。こうして春花と張姉さんは応接間に通され、始めてくる立派な屋敷の作りを見てびっくりしならが、あの張の老人は何者かを首を傾げ始めた。

しばらくして張玉書が応接間に現れたので、春花は泣きながら跪き、自分の夫のことを細かく話したあと「お願いします。この義理の娘の夫をお助けください」と願った。

 「ははは!わしにはそのほうを義理の娘にする資格などはござらん。しかし、義理に父さまに代わって、隠居の私がなんとかしよう。二人とも安心して屋敷に泊まっていなさい」といい、執事にこの二人を大事に扱うよう命じた。もちろん、執事やほかの屋敷の者はこんな農民をどうしてと不思議がるばかり。

 さて、張玉書はそれから執事に、春花が言ったことがホントかどうかを役所に調べに行かせた。しばらくして執事がもどり、確かに春花の夫が人殺しの罪で牢獄にぶち込まれているという。そこで張玉書は暫く考えてから、二人の下のものに県令が事件を裁く部屋に「張」という大きな文字を書いた提灯を今晩のうちにこっそりとぶら下げておくよう命じた。

 次の日、県令がいつものように事件を裁くために出ると、なんと天井に大きな二つの提灯がぶら下がり、それぞれに大きな「張」の字が書かれている。

 「なんだ?あれは!無礼者めが!誰かあの二つの提灯を下ろせ!」といった途端、「張」の字を思い出し、この二つの提灯は地元に住むかつての高官である張玉書のこのだとさとり、慌ててほかの事を放り出して、供を連れ張玉書の屋敷をたずねに来た。

 で、応接間で迎えた張玉書は、何がへまをしたので叱りを受けると思ってびくびくしている県令にいう。

 「いや、忙しいところをご苦労であった。」

 「これはこれは、何が私めがへまをやらかしましたのでございましょうか?どうかお許しくだされ」

 「実はな。数日前にそちは天秤棒で人を誤って死なせた農民を牢獄にぶち込んだであろう」

 「え?それは・・。あのものは確か天秤棒でうしろにいた男を殴り殺したのでございます。天秤棒が男の頭に当たったのみた証人が多くいます」

 「うん、うん、その場にそちはいたのか?」

 「いえ!」

 「たわけ!そちは県令じゃぞ!清の法令を知っているはず。法令には、誤って人を死なせたものは死刑には出来ないと書いてあるはず」

 「はは!」

 「わしの調べたところでは、農民はそのときかなり重い薪を天秤棒で担いでおり、薪をくくってある紐が不意にきれたので、薪の重さにより天秤棒の片方はすごい勢いでうしろの男に頭に当たったのじゃ。それに天秤棒の先は丸くはないので頭に食い込んだのだろう!」

 「しかし、これを見ていたものは殴り殺したんだと言い張りますので、私めは死罪として裁きましたが・・」

 「いま申したではないか!重い物を担いでいたので、紐が切れたときにその重さでつく勢いは強いとな!うしろを歩いていた男は当たり所が悪かったのじゃ。運が悪い」

 これを聞いた県令は納得しながらもうなだれている。そこで張玉書がいう。

 「そちは、かの吉発というものが誰かか知っておるのか?」

 「はあ?農民でございましょう」

 「たわけ!農民だからといって死刑にするのか」

 「いえいえ!そんなことはござりません」

 「教えてやろう!あの吉発とはいまの皇帝さまの義理娘の婿殿じゃ!」

 「げえ!」

 これを聞いた県令で土下座し、ぶるぶる震えだした!

 「どうか!どうか!私めをお許しくださいまし。そんなこととは少しも知りませんでした。お許しくださいまし!」

 「よいよい!知らぬものに罪なしじゃ!早く、吉発を牢獄から出すのじゃ!」

 「はは!直ちに牢獄からだします!」

 ということになり、死刑を待って途方にくれていた吉発はすぐに罪なき者としてだされ、妻の春花らと供に張玉書に何度も何度も礼をいい家に戻った。

 もちろん、張玉書は、この夫婦に多くの土産を持たせたばかりが、春花を助けたという張姉さんにも褒美を与えたという。

 そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。

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