27日から5日にわたって北京で開かれていた第13回北京国際科技産業博覧会(「CHITEC 2010」、以下「北京ハイテク博」)が31日閉幕しました。中国各地の省・直轄市・自治区のほか、20あまりの国と地域および9つの国際機構が出展しました。
■中国最大の国家級ハイテク博
毎年5月、北京で行われているこの北京ハイテク博は、科学技術をテーマにした最大規模の展示会です。中国科学技術部、中国国際貿易促進委員会などの共催により、1998年にスタートしました。創設から13年の間、数多くの新技術や新製品がこの博覧会を通して人々の生活の中に広まり、また、数多くの先進的な構想がここで生まれました。北京ハイテク博は、研究所や産業界が自主イノベーションの成果をPRし、交流や商談をする場、また一般市民にとっては最先端の技術を体験する場として注目されてきました。
今年の北京ハイテク博は「自主イノベーション力を強めて、成長バターンの転換を速めよう」をテーマに、省エネ、環境保全、新素材、ITとバイオ育種などの最新成果を集中的に展示していました。
6万平米の展示会場は、消費者向け電子製品と情報技術、循環型経済と省エネ・排出削減、自動車など10のブロックに分かれていました。低炭素技術、通信、放送、インターネットの3つのネットワークを融合する「三網融合」、もののインターネットなど世界でもホットな技術や製品が数多く陳列されていました。
■新技術の数々が結集
中には、人々の生活に密接にかかわっている技術も数多く展示されていました。展示会では、低速リニアモーターカーの模型もありましたが、何よりもメディアの注目を受けたのは、「立体バス」のアイディアでした。
幅二車線のバスは上下2階からなっていますが、上の階は乗客の乗り場、下の階はトンネルのようにオープンな空間になっており、乗用車が自由に通れるようになっています。この設計により、バスと乗用車が道路を奪い合うことを防ぐことができるということです。
このバスは「民間発明家」として知られている宋有洲さんと彼のグループが設計したもので、今、北京市の門頭溝区と安徽省の蕪湖市に納入する計画を進めているということです。ちなみに、この立体バスは太陽光発電と都市電力を使っており、化石燃料に頼っていないため、環境にやさしいバスとしても知られています。
また、北京の企業による「太陽エネルギー全天候コージェネレーションシステム」が来場者の強い関心をひきつけました。担当者の康健さんの紹介によりますと、このシステムは個人住宅とオフィスビルの両方に搭載でき、建物全体の電気やガスの供給、温度調節などをまかなうことができるということです。
「このシステムは、夏に蓄えた温熱を冬の暖房や熱湯用に使い、また、冬には冷気を貯めて夏の冷房として使えます。電力とガスという生活に必要不可欠のエネルギーについては、ソーラー発電で水を分解して、水素と酸素を作ります。水素は炊事用の燃料になり、同時に燃料電池として発電し、電力を供給してくれます。これにより、すべての冷暖房と電気供給がまかなえます。太陽エネルギーと温度差を生かしたシステムで、他のエネルギーを使わなくても済むようになります」と康さんが紹介してくれました。
なお、立体バスにせよ、コージェネレーションシステムにせよ、これらはいずれも今回展示された技術のほんの一部に過ぎません。今回のハイテク博に出展した内外の企業や研究機関は2000社余りあり、いずれも最新の研究成果を展示していました。
このうち、香港理工大学による世界初のインテリジェント鉄道モニタリングネットワーク、パナソニック社による3Dテレビ、中国ユニコムによる3Gに基づく携帯決済システム、リモートモニタリング、ビデオ・オン・デマンドなどの通信ソリューションといった新技術や新製品が好評でした。
最新のハイテクをいち早く目の当たりにしたいと思って、数多くの市民も来場しました。高校の職員の王さんは「私は医薬に関心を持っています。医薬技術において、何か新しいイノベーションや発展がないかを知りたくてやってきました。ここまで見てきた中で、印象に残ったのは、ガンの予測技術です。中国にはガンの患者が多いため、もしもあらかじめ予測することができれば、末期になるのを避けることができるので、いいのではないかと思っています」と話しました。
■3D技術が注目
ところで、昨年末の3D映画「アバター」の上映をきっかけに、今年は「3D元年」としても注目されています。今回のハイテク博では、中国の総合家電メーカーのハイセンやハイアール、それから日本のパナソニック社がいずれも家庭用3Dテレビを展示していました。
パナソニックのブースには150人が一度に入れる3Dシアターが設置され、開場とともに、シアターの入り口前にはたちまち行列ができました。
また、3D体験コーナーにはホームシアター用のプラズマテレビ「VIERA(ビエラ)」や、一体型二眼式3Dカメラレコーダーなどが展示されていました。こちらもメガネをかけて、本物さながらのリアルな映像をこの目で見てみたいという人たちであふれていました。興奮冷めやらぬ顔で、メガネはずしたばかりの見学者は、「映像との距離がぐっと近くなり、臨場感があって感動しました。自分の家でも見られたらいいですね。欲しくなりました」と感想を聞かせてくれました。
■20万人あまりが来場
今回の博覧会は展示会だけではなく、数多くの講演会やフォーラム、商談会も同時に行われていました。中国科学技術部の杜占元次官は、今回のハイテク博は例年に比べて、内容が一層充実したものになったと次のように話しました。
「今回の博覧会は、まずは中国の自主イノベーションの最新成果を集中的に陳列しており、ハイテクが産業技術の変革や成長パターンの転換において果たしている力強い役割を展示しました。次に、低炭素技術や生物多様性、世界各地の街づくりの構想などのホットな話題をめぐって、活気溢れるイベントを数多く行いました。また、ハイテク博開催中は、内外の専門家や企業家がたくさん集まっている上、さまざまな情報も集中しているため、産業間の協力や科学技術の実用化を促進する効果が期待できます。北京ハイテク博はこれからもオープンで、広い視野を持ち、絶えず国際協力のレベルをアップしていきます。」
北京ハイテク博の公式サイトの発表では、今年は延べ20万5000人が来場し、568の投資や技術協力、貿易の契約が結ばれ、総契約額は前回より47%増えて389億元に達しました。また、調印したプロジェクトでは、ニューエネルギー、新素材、省エネ・環境、バイオ製薬、情報ネットワークおよびハイエンドの製造業などの戦略的な新興産業の契約金額が全体の約7割(68.2%)を占めているということです。
北京ハイテク博の中国経済への促進効果、人々の生活にもたらした利便性がこれからも期待されます。(Yan)
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