広東省が改革開放政策の牽引車となっていることは、多くの数字が裏付けている。今年の第三四半期までのGDPは25300億元となり、昨年同期に比べ10.2%の増となった。年間では3万億元になる見込みで、19年連続して全省トップに立っている。
この戦列に加わっているのが、すでに紹介した東莞市だ。多くの外資系企業に恵まれているとはいえ、新たな誘致も必要になってくる。それにふさわしい場所がある、と聞いたので訪ねてみた。松山湖科学技術産業パークで、中国で最も発展の潜在力を持つ開発区の呼び名が高い。
市の中心部から車で40分ほど。8平方キロの湖が見えてくる。これを囲むように、企業の工場、研究・開発、教育など四つの区域に分けられている。すでに大中の70企業が進出し、このうち、10社が世界最強企業500社の仲間に入っている。電子技術、医療品、精密機械の三分野の割合が大きい。
単なる企業だけの町にしないよう、学校や住まいの整備にも力を入れているのが特徴。そして、松山湖をそっくり利用し、生態環境を守り、多くの旅行客を引きつけようとしている。11月には深センで企業向けの説明会を開き、この先、台湾、アメリカ、北京、上海などでも誘致活動を続けていく。
「金融危機と無縁というわけではないが、絶え間ない刷新、チャレンジ精神を持っていれば道は開けるでしょう」と松山湖科学技術産業パーク管理委員会の曽莉さんは自信満々だ。
EAST(易斯特)集団の何思模さん 何思模さんとCRIの尹カ団長
一般家庭にはなじみが薄いが、電気、変圧器の部品を製造しているEAST(易斯特)もこの一角に工場を構えている。青海チベット鉄道、北京オリンピック、有人宇宙飛行船「神舟」、そして、2010年に迎える上海万博と、EASTから送り出された商品が目に見えないところで活躍している。
EAST集団を率いるCEO・最高経営責任者の何思模さんは立志伝中の人物だ。清華大学在学中に、3000元の資金をもとにたった一人の会社を立ち上げた。今4000人を超す従業員を抱え、ビジネスばかりか研究開発に余念がない。博士の肩書きを持つ。
「改革開放政策がなければ、出身地の安徽省で畑で泥にまみれていたかもしれません。私は従業員にもそのことを伝え、彼らの生活を第一に考えたい。そして、企業の社会貢献を果たしたい。お金は子孫に残しません」と何さんは力強く語ってくれた。(文:吉田 明)
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