■「投資の基礎に芸術鑑賞眼を」
ところで、経済の高度成長に支えられ、アートフェアの開催、そして、アート投資の面でもたいへんな勢いを見せている中国ですが、「投資よりもアートそのものの芸術性にもっと注目してほしい」という業界関係者の指摘もあります。
「ファインアート北京」の創設者で、取りまとめ役の董夢陽さんもこの点については賛同しており、アート愛好者の人数を増やし、アートに対する鑑賞力を高めることこそ今後の市場の健全な成長につながるとしました。董さんは、今回の「ファインアート北京」の展示会おいて、取引を中心とする画廊展のほか、1930年代以降からの近代アートを紹介する「テーマ展」を併設したのも、アートフェアは同時に教育的役割も果たす必要性を感じたからだと言い、次のように語りました。
「近年、中国の現代アートは大きな勢いを見せていますが、アートの発展には本来、古代から現在に至るまでのプロセスがあります。中国ではその間の部分が抜けてしまいました。現代アートはそれまでのアートを受け継いだ形で現れてきたので、その間のプロセスを知らないと今の様子もちゃんと理解できないと思います。
アートフェアは、本来はコマーシャル目的で行われるものですが、私たちは同時に、中国におけるアート教育の不足を補講しなければならないように思っています。中国では、ルーブル宮殿のような美術作品が常設展示されている施設はまだ少ないからです。
アートフェアの主催により、社会全体のニーズを牽引し、人々に対するアート教育を促し、市場全体のパイを大きくしていくことが大きな目的です。こういったマクロ的な環境が整えばこそ、ビジネス環境が改善されますし、もしそうした取り組みをしないと、ビジネスも展開しにくくなると思います」
■今やアート中心地としての北京
中国初のアートフェアは1993年に開かれましたが、画廊が主体となって行うアートフェアやアートイベントは2000年以降のことです。歴史はまだ浅いものの、近年は、春と秋になると、北京や上海で各種絵画展やアートイベントが集中的に行われるようになりました。これに伴って、イベントの開催をおいかけるように移動する全国の画廊関係者や芸術愛好者も現れるようになりました。
上海での出展を終えてすぐ、「経典北京」に出展した成都の画廊経営者・楊俊さんの話です。
「春と秋は一番忙しく、また一番収穫の多い季節でもあります。毎年、春と秋には、私は必ず成都を出て、北京や上海に出てきて、出展で忙しく走り回っています。『経典北京』には去年から参加したかったんですが、ほかの日程とダブったため参加できませんでした。今年はやっと出展できて、うれしいです。終わったばかりの上海展ではたいへん良い反響を得られたので、北京の反響にも期待してます」
西南部の成都は、四川美術学院や藍頂芸術区などの美術大学やアートエリアがあることで、中国の現代アートにおいて重要な位置を占めており、現代アートの画廊経営に豊富な資源を提供しています。「今回は初出展なので、作品の販売は第一の目的ではなく、それよりも契約画家のPRにつながればと思っています」と楊さんは期待を語りました。
一方、見学者にも全国各地からの芸術愛好者が見えています。
「経典北京」の会場で出会った湖南師範大学付属芸術中学の美術教師・府さんと胡さんはもともと北京の東郊外にある宋荘で行われる美術展のために上京しましたが、北京に来てから友人にこの時期に行うほかのイベント情報を聞き、来場したと言います。
「長沙では、アートフェアなどのイベントはほとんど行われたことがありません。北京に来て色々勉強になりました。たとえば、今回見た中で、ハイテクを融合したニューメディアアートは、これまで見たことのないものでした。北京での見聞を持ち帰り、長沙の学生たちにも紹介したいと思っています」。
(王小燕、鄧徳花、陳博、大野、胡徳勝)
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