2008年夏、私は北京で驚きと感動であふれた素晴らしいドラマを見せていただきました。オリンピックとパラリンピック、2つの大会運営での五輪組織委員会の献身的な努力。交通規制、煙を出す工場の操業停止、安全チェック等の市民の我慢。中国という国、そして北京に集ったすべての人々のベクトルを、この2つの大会に向け集中させ、感動のドラマに結びつけた中国政府の持つパワーに私は圧倒されました。
五輪が始まり、驚きの開会式から、選手達が演じた多くの名勝負と好記録の誕生に沸く一般市民、ボランティア、外国人観光客、北京はどこに行っても明るい笑顔であふれました。オリンピック以上の盛り上がりとなったパラリンピック。車椅子リレーで中国が優勝した瞬間、超満員の歓声で鳥の巣全体が大きく揺れ、私の魂もゆさぶられました。
北京に長く住む人から見ても、この五輪期間での外国人への暖かな対応の変化は驚くほどのようで、街のあちこちで聴かれた五輪ソング「北京はあなたを歓迎している」の歌詞の通りに、世界からの来客をもてなしている心暖まる風景があちこちに見られました。そこには、世界から最も注目されている街の人々の行動は、模範的でなければいけないという北京市民の心意気が常に感じられました。
パラリンピックの時にオリンピック公園で見かけたたくさんの中国人家族。嬉しそうに写真を撮りあう人々の幸せそうな笑顔が、今でも目に焼きついています。中国の人々がこの大会開催を通じて体験した満足感は、これからの中国全体の発展を今までとはまた違った方向へと導くような気がしています。北京に来た多くの外国人もこの大会を通じて中国人の素顔にふれることができ、感謝の気持ちをもって母国に帰って行ったと思います。
世界の中での中国情勢はこれから先も様々に変化してゆくと思います。でもそんな中で、2008年夏、北京から発信された幸福の種が、タンポポの綿毛のように世界中に広がり、いつか美しい平和の花を咲かせてくれることを、私は心から祈っています。
【プロフィール】
1957年生まれ 早稲田大学教育学部卒 筑波大学体育研究科大学院修士課程修了 専門スポーツは陸上競技 早稲田大学本庄高等学院 教諭 早稲田大学スポーツ科学部講師 2008年4月ー2009年3月 早稲田大学から北京大学への交換研究員
|