北京オリンピックの聖火ランナーには、元スポーツ選手はもちろん、芸能人、地元の企業の代表、そして一般市民も多く選ばれています。そのほか、四川大地震の救援活動に参加した人もいます。
6月5日、被災地での救援活動を終えた消防士の蒋愛兵さんは、湖南省の最終ランナーとして聖火リレーに参加しました。消防士は、普段の仕事では火災などさまざまな事件や事故に遭遇していて、悲しいことや残酷なことはよく経験していますが、四川大地震の大変さは自分の予想をはるかに超えていたと話します。
「私は消防士を務めて12年になりましたが、一般の人から見て非常に大きな事故も経験したことがあります。しかし、5月12日に起きた四川大地震は、違いました。道路が寸断されたり、建物が崩れたり……マグニチュード7.8、その後8.0に修正しましたね。それを見たとき、今回の救援は、きっと今までと違って、非常に難しいだろうって思いました」
蒋さんは、消防隊員とともに震源地のブン川県で救援活動をやりました。5月17日、生き埋めになっている父を救い出してくれるよう、地元の人から頼まれて救助を行いましたが、その中で、一生忘れられないことがあったということです。
「ブン川県で救援をやっていたある日、ほかのところから、一人の男性が来て、山の中に住んでいる父を助けてくれと頼みました。それで、私たちはすぐ、彼に案内してもらって、そこに向かいました。余震がまだまだ続いていたので、途中、小さな土砂崩れが何度かありました。そしてなによりも危なかったのは、彼のお父さんの家に行くには、いつも崩れる可能性のある『堰きとめ湖』を回らなければならなかったです。それで、我々がびっくりしたことがありました。その男性は、私たちを止めたんです。もうやめてくださいって。皆、お父さんやお母さんがいるのに、私の父を救うことで命を失ったらいけないっていいました。でも、私たちは、被災地の住民こそ家族と思って、危険を承知で、山に入ったんです。そして瓦礫の中から彼のお父さんを見つけて、無事に救い出しました。すごく感動しましたし、嬉しかったです」
こうした危険な中で人の命の救助を達成した蒋愛兵さん。被災地での救援活動が終わって、故郷に戻り、湖南省の聖火リレーの最終ランナーとなりました。オリンピック聖火に込められている愛を伝えたいと、蒋さんは話します。
「オリンピックの聖火をつなぐことで、友情と愛を伝え、全国と四川の人の心をつなぎたいと思います。被災地の人々が強くなって、故郷が早く復興するよう祈っています」
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