パナソニックチャイナ有限公司北京五輪推進室・林卓一室長に聞く(下)
Q 五輪は景気の上昇効果(奥運経済)がある一方、開催終了後の景気後退に対する懸念をどうみていますか。
A 五輪後の財政、経済といったものは、過去の五輪をみても、楽観的ではありません。実際はそうでしたし、五輪終わったあと、景気に影響を与えました。ただ、まあ、中国は非常に大きな国ですし、北京五輪は大事な国家行事。これは突き詰めていえば、スポーツの祭典で、これ自体は経済的な効果がもともとあまり期待できません。あくまでも、五輪は世界中から、一番優れたアスリートのスポーツの祭典です。
しかし、インフラ整備、五輪のために行ったさまざまな事業は、五輪の後、非常に有効に作用してくると思います。たとえば、北京の地下鉄工事。五輪のために急いで頑張って作られたようですが、これによって、北京市のインフラが圧倒的に向上したわけです。
これは、経済にとって、非常にプラス的な要因になります。そういった意味で、北京五輪を一つの機会として、色んな意味での次の発展のためのステップ、基礎を築いたのじゃないかと思います。北京市に限っていえば、そういう(経済後退の)心配はしなくても良いのではと私は個人的に思っています。
Q 五輪の開催はパナソニックの企業活動に何か影響を及ぼしていますか?
A まずは、企業活動とスポンサーシップとは全く別です。私どもは五輪のスポンサーとして、色んな仕事や準備をしていますが、それは、なるべく、中国での事業に影響を与えない形で仕事をしてまいりましたし、実際、毎日、現場でやっている事業は、五輪とは、ずっと切り離してやっています。五輪が終わった後も、中国の事業に大きな影響が出ることはありません。
また、会社も五輪のために存在したものではありません。私どもはあくまで、中国に対してキチンとした事業がある中で、プラス効果ということで、五輪協賛に取り組んでいます。
一方、私どもにとっては、決して北京五輪が終わったからと言って、五輪がすべて終わったということでもありません。五輪はこの後、バンクーバー、ロンドンとやってきますし、パナソニック社の五輪提供契約は現在、2016年まで続いています。五輪は世界の五輪なのです。
中国が五輪とかかわっていく、私たちが五輪とかかわっていくことは、北京五輪が終わったあとも続きます。
Q 五輪協賛が、今後のパナソニック社の中国での事業発展にとっての意義は?
A 私個人の考えとしては、中国にとって、非常に大事な大会を成功させるために貢献すると、このスポンサーというのが非常に大事な仕事です。同時に、こういった実績が今後のパナソニックのブランドや北京市・中国政府との関係、お客様との関係といったものに何らかの効果があるのではと期待しています。これはスポンサー的にいいますと、後光効果と言います。北京五輪を一緒にやった会社になるという意味で、中国にとっても、私どもにとっても、非常に互いの信頼関係を築く上で、大事な行事じゃないかなと思います。
Q 北京五輪組織委との協力に思ったことは?
A すべての組織委員会にとって、五輪は初めての体験です。2回も3回もやったところは、今のところ、ありません。北京五輪組織委員会がありますが、そこで仕事される方にとって、北京五輪というのは、やはり初めての五輪なのです。そういう意味では、色々と分からないところ、慣れないところはもちろんありますし、国際社会の舞台での五輪というスポーツ競技、色んな意味で文化だとか、言葉だとか、習慣の問題がどうしても出てきます。ただむしろ、そんな違いがあることを当たり前であり、だからこそ、私どもが自ら五輪の現場に入っていて、大会の技術サポートをさせていただいているのです。
私どもは何度も五輪に関わっており、失敗の経験もたくさんあります。色んなトラブルが発生した時に、その影響をできるだけ最小限に抑えること。それによって大会の運営を成功に導くという仕事を、私どもも組織委員会と一緒になってやっていく、ということなります。私どもにとっても、初めての北京での五輪、こういう中で、色々と普段聞けないこと、なれないところ、なかなか、理解しあえない部分というのがありますが、互いに分かりえるようにすること。これが五輪大会を成功へ導く上で一番大事なことではないかと思います。
Q 最後に、この5年間の駐在生活で一番感銘深いことは?
A 私は2003年4月から、北京に赴任し、北京で暮らして五年になります。今の北京は、五年前とぜんぜん違って、大きな変化が見られました。それは、北京市と五輪に携わっている人はものすごく努力して、少しでもよい町にしてきたのではないかと思います。変化し続けることは立派なことで、それだけ、北京五輪という行事の重要性を痛感させられています。(聞き手:王小燕)
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