今日、中国では、海外留学から帰国した人達が就職難に直面しています。
以前は海外から帰国した人達と言えば、多国籍企業など華やかな仕事に勤める事ができて、周りの人から羨ましがられる存在でしたが、最近は厳しくなっているようです。企業の経営者を対象に行った調査で、こんな結果が出ています。調査に応じた経営者の90%以上が、海外帰国組みと国内卒業組みとを比べた場合、海外帰国組みの競争力は低下したと認識していると答えています。
調査結果では、4つの点を上げています。
一つは、海外帰国組みの人達は、給料にしても企業の規模にしても高望みをしすぎる事です。二つ目は国内の大学などを卒業した人達の実力が上がったこと。三つ目は海外で取得した卒業証書などの価値が全体的に下がった事。そして四つ目は、海外留学者が増えた結果、希少価値がなくなってきたという点を上げています。
たしかに留学した人の立場に立ってみると、留学には莫大な費用をかけ、大変な苦労をしたので、条件の良いところに就職したいという気持ちも分からないではないですけど。しかし企業側からすると、最近は留学した人が必ずしも優秀な人材とは限らないという受けとめ方が強くなっているようです。中国でも最近は毎年10万人を越える海外留学者がいて、日本と同じように、中には国内では良い大学に入れそうも無いので海外留学を選ぶというケースが増えているようです。
この所、大学生の就職難が指摘されていますが、この調査結果から見ても、海外から戻ってきた留学生達もきびしい情況にあるのでしょう。
今回の資料集めでこんな新語を覚えました。海という字と待つという字を書いた「海待」という言葉です。海外留学して戻ってきた人が職を見つけることが出来ずに、家で待っているということなんですね。こんな新語が出て来たこと自体が、彼らの厳しい状況を表しています。それ以前には、海という字に帰国の帰と書いた「海帰」という言葉が流行っていて、この言葉には華やかな、そして羨ましいニュアンスがあったんですけどね。
厳しい就職状況の具体的なケースとして人民日報のネット版には、こんな例が紹介されていました。オーストラリアでの留学を終えて帰国したある男性は、帰国したばかりの時、「勤め先は大都市にある多国籍企業で、年収は10万元以上」という高い目標を掲げましたが、帰国して1年以上経つのに、長期契約できる会社は見つからない。次第に条件を下げて、最近行われた面接では、給料は月4000元、年収にすると5万元ぐらいで結構ですと言ったにも関わらず、結局ダメだったという事です。
もうひとつ女性の例を紹介しましょう。彼女は、北京の重点大学を卒業した後、イギリスの有名大学に留学し、修士課程を卒業した後、今年の3月に帰国しましたが、会社を色々と当ってもまだ仕事先が見つからないということです。彼女は秘書の仕事を探しているのですが、仕事の経験が無いという事が、一番のネックになっているということです。
中国の企業では、仕事の経験がある即戦力を求める傾向が強いんです。そのために大学の新卒者もなかなか就職が決まらないという状況になっているんです。この点は、日本の企業と大きく違う所だなと感じました。日本の企業の場合は、新卒者を採用して自分の企業で育てていくという傾向が強いんです。中国の場合、海外留学をする時は、卒業した後、企業に就職して仕事の経験を積んでおけば、帰国してから仕事が見つけやすくなるということでしょうか。
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