「あれ?六郎の言ったことはうそだったのか!」
こう思った許さんはその夜も半小屋で酒を飲んでいると、六郎がやってきた。
「六郎!どうしたんだい?」
「許さん、これで今晩からまた一緒に飲めますよ」
「というと?」
「あの婦人は一度死んだのです。でも、あの幼い子供がかわいそうになり、あの婦人をこの世に帰したのですよ。いつ、私の代わりがまた来るかわかりません。」
「そ、そうだったのか。じゃあ、また一緒にのめるね。飲もう飲もう!」
こうして六郎はその夜から半小屋にまた来るようになった。
それから一ヶ月が過ぎた頃、六郎がいう。
「許さん、今度こそはお別れですよ」
「え?また代わりの人が来たのかい?」
「いえ。実はこの前のことを天帝が耳にいれ、私のよき心構えをほめてくださり、ここから遠い招遠県にあるウ鎮の土地の神になれと命じられましてね。」
「土地の神に?」
「そうです。土地の神です。明日赴任しないといけません。許さん、私のことを思ってくれるのなら、遠いんですが、あの招遠県に行ってみてくださいな。どうです?」
「それはよかった!君が土地の神になるのだったら、わしは必ず訪ねていくよ。」
「ありがとう」
「でも、君は神でわしは人間だ。そこに行っても君に会えるのかい?」
「行くつもりでいるなら、まずは行ってください」
ということになり。この夜の酒は別れ酒となり、祝い酒ともなった。こして二人はかなり楽しく飲み、夜が明ける前に六郎はまた会いましょうと言い残し、どこかへ行ってしまった。
さて、それから数日後、許さんは旅する支度をした。どこへ行くのかと聞く妻に、これまでのことをかいつまんで話すと、妻は本気にせず、
「そんなところへ行ってその土地の神さまが本当にいても、相手が泥人形が相手にされませんわよ。お前さんもおかしな人だね」と馬鹿にする。
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