許さんはこういうと、用意してきた紙銭をその場で燃やし、酒を取り出し、地面に撒こうとすると、かの土地の神の像の後ろから風が入ってきて、許さんの周りをぐるぐる吹き回り、また外へと吹き去っていた。
その日の夜、許さんは宿に戻って一人で飲み食いしたあと、旅の疲れが出たのかかなり眠くなったので横になって寝てしまった。すると、夢の中に正装し立派な姿になった六郎が出てきた。
「許さん、遠いところわざわざたずねに来てくれてありがとう。私はうれしくて涙が出そうだ。私はこのちっぽけな土地の守り神なので、以前のように姿を現し、許さんと酌み交わすことはできない。残念です。許さん、地元の人々は私に代わっていろいろと許さんに手土産わたすから、必ずもって帰っていってください。いいですね。また許さんがシ川に帰るときは私が見送りますよ。いいですね。」
翌日目を覚ました許さんは、夢の中で六郎が言ったとおりに、ここウ鎮に何日かとどまり、地元の人からここの土地の神のご利益の話をいろいろ聞いた。
「お客人、ここの土地の神さまは、民百姓のためにいろいろしてくださいますぞ」
「そうそう。おかげでここに住むみんなが安心した暮らしができるというもの」
「本当にありがたい神さまですよ」
みんなが口々にいうので許さんは安心して故里の戻ることにした。これを知った人々は用意していたものを遠慮する許さんの荷物の中へ詰め込み、ものが多すぎるというので、なんと驢馬までくれ荷物をそれに載せてくれた。こうして許さんがみんなと別れ、峠を超えようとしたとき、急に風が吹いてきて、風は十数里、許さんにまとってきた。この風は六郎だと悟った許さんは、両手を合わせいう。
「六郎!あんたが気の優しい、民のために働く土地の神になってくれて安心したよ。わしはもう何も言うことはない。これからも元気で暮らすから安心してくれ。もう送らなくていいから帰ってくれ。ありがとう」
許さんがこういい終わると、風はつむじ風となってどこかいってしまった。
こうして許さんは故里へ戻ったが、そのときからこの驢馬やお土産を基に商い始め、のちには金持ちになったわい。
え?もちろん、許さんは、その後は川で漁をするのをやめていた。うん!
はい、おしまい!
そろそろ時間のようです。では来週またお会いいたしましょう。
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