「音楽の散歩道」、今週は、中国の少数民族、トン族の民謡をお届けしています。
トン族は、中国少数民族の一つで、2500年あまりの歴史を持っています。主に、貴州、湖南、広西と湖北の四つの省が境を接する山間部に住んでいます。
トン族の民謡は、その言葉で、「ガロウ」と呼ばれます。「ガ」とは歌の意味で、「ロウ」は、「古い、スケールが大きい」という意味です。複数の異なる声部(パート)で進行する多声(部)音楽(ポリフォニー)で、指揮や伴奏がないというのが、トン族民謡の大きな特徴となっています。美しい自然や日ごろの仕事、愛、友情などがよく歌われます。
昔、トン族には文字がなく、優れた文化伝統、風俗習慣、社交マナーなどはいずれも美しい歌声で代々受け継がれています。トン族の人々は歌を宝物としています。歌は知識であり文化だと考えています。歌を多く歌える人こそ、知識人だと見られます。トン族が集まり住むところで、歌の師匠は、もっとも知識があり、道理に通じたエキスパートとして尊敬されるのです。トン族の民謡は、トン族文化でもっともすばらしいもので、歌の内容や表現方法などは、いずれもトン族の風俗、性格、心理および生活環境と深くかかわっています。歌はトン族の歴史の記録であるだけでなく、その文化そのものの表現でもあります。
では、ユーモラスで、生活の息吹を感じる「魚とりの歌」、「蝉の歌」、トン族の女性が大胆に愛を求める様子を歌う「才歌」、「リスの歌」そして、「初めて貴州にきた」合わせて五曲をお聞きください。
トン族にとって、神聖な存在で、かけがえのない精神的な糧ともされるトン族の民謡です。
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