今度は「南皋筆記」から「石の鏡」です。
「石の鏡」(石鏡記)
広東の姚さんが、商いのため船で四川に出かけた。この日、船は彭山県のある渡り場に着いたので、姚さんは地元の宿に泊まった。その晩、おかしな夢を見た。それは、夢に川の神が出てきて、翌日、あるものが来るので、それを捕まえ、宝物を手にして、それを売った金で神を祭れということだった。目が醒めた姚さんは、首をかしげ、これは何かあると思った。
さて、その日、姚さんの船が川幅の広いところに来たとき、川上からおかしな獣が流れてきた。みると、魚のようで角が生えており、お腹が大きく、大きな尻尾がついて、ワニのようでもあった。船頭はびっくりして騒ぎ出したが、姚さんは昨夜の夢でいう宝物とはこれかもしれないと思ったが、こんな化け物が宝物とはどうしても思えないので、とんでもないと空に向って叫んだ。
「川の神よ。私を懲らしめるのなら、私はこの化け物に食われてやる。もし、私に福をもたらすのだったら、これをあんたに供えよう」
すると、空から声がした。
「川の水の怒りをしずめ、天は汝にものを賜り、これを烹して食べよ」
「え?天が私にものを賜り、これを煮て食べろだって!!??」
姚さん、これを聞いてしばらく考えていたが、不意に天に向って言った。
「天が私にくださったものであれば、その言いつけに従います」
こういって姚さんは、怖がる船頭たちに金をやるから川面に浮ぶ、その獣を捕らえて船に引上げろと励ました。これを聞いた船頭たちは、こわがっていたものの、金がもらえると聞いて元気を出し、そな暴れる獣を何とかして船に引き上げ、瞬く間に打ち殺してしまった。
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