そしてそれを食べるため大きな鍋を用意し、化け物に包丁を入れたところ、腹の中から石造りの丸い鏡が出てきた。これが神の言う宝物かと姚さんは跪いて天に礼をいい、その鏡を大事にしまいこんだ。もちろん、その獣をみんなは気味悪かったが、神の言いつけだというので、恐る恐る味見し、思ったよりうまいので食べられるだけ食べたワイ。
さて、姚さんが商いを終わり四川から船で戻る途中、巫山という峡谷に来たとき、不意に雨雲が立ち込め、あたりは暗くなり、強い雨がふり、大波が起き、近くを走っていた船は沈んだが、姚さんの船だけは沈まない。このとき、姚さんは川の神がくれた石の鏡を思い出し、さっそくそれを取り出し、手にして掲げたところ、なんと雨や風はうそのように止んでしまった。これに姚さん、川の神の「川の水の怒りをしずめ」という意味を悟った。
「これはすごいものが手に入ったぞ」と姚さんは喜んでこの石の鏡をしまいこんだ。
で、船が誼昌についた。四川から無事にここに着いたのは姚さんの船だけだったので、どうして姚さんの船だけが助かったのかと人々は聞く。これに姚さんは黙っていたが、事の仔細を始めから終わりまで見ていた船頭が言いふらした。
これを耳にしたある異人が、さっそく姚さんのところへ来て、その石の鏡を売ってくれという。しかし、姚さんは宝物だから売れないといって断ったところ、その夜、姚さんの夢にまたかの川の神が出てきた。
「よいか。かの異人は大金持ちじゃ。お前は銀50万両で、石の鏡を売るのじゃ。そしてわしのために祠を作り、祭ってくれや」
眼が醒めた姚さん、このときになって神の目的が分かった。
「そうだったのか。神の言いつけならば」と姚さんは次の日にかの異人を呼んできて、この石の鏡を銀50万両で売りつけてしまったわい。こうして姚さんはいっぺんに大金持ちとなった。
その後、故郷に帰った姚さんは、石の鏡を売ったお金で、家や土地を買い、また大きな庭に壇を作って、そこに小さいが立派な祠を建て、川神の祠という四文字を刻み、この自分に福をもたらしてくれた神様を末永く祭ったという。
そろそろ時間のようです。来週、またお会いいたしましょう。
|