すると、年は二十歳ぐらいの顔かたちが整った若者が、胸に赤い花をつけ、花婿服姿でやってきて、まず岳父となるじいさんに一礼した。そこでじいさんは、嫁婿を横にいる殷公に引き合わせたので、花婿は相手が尚書だと聞いてその場に跪き頭を上げた。これに殷公はいくらかあわて、花婿を抱き起こすと、笑顔で答えた。そのあと花婿は、その場にいる人々に挨拶して回り、自分の席に着いた。すると何人かの若い女子が料理やお酒を運んできた。みるとそれは殷公が見たことのないすばらしい料理で、とてもよい匂いがし、徳利や杯も変わっていた。特に殷公とじいさん、それに花婿などが座る卓で使う杯はどうも金でできているらしく、光っている。こうして宴が始まり、みんなはニコニコしながら話を交わし、じいさんとその妻、それに花婿に祝いの言葉を送っては飲み食いし楽しんでいた。もちろん、殷公も遠慮せずに飲んでいたが、急にじいさんが「花嫁を」というので、二階から数人の若い女子に囲まれ花嫁が降りてきた。花嫁は赤い布をかぶっていたので、顔かたちはわからないが若くてかなり美しい娘のように思え、花嫁は、花婿と一緒に殷公に挨拶し、その他の客人から祝いの言葉をかけられた後、母親の横に座った。