むかしむかし、于江という少年がいた。ある年、于江の父は野良仕事に疲れ、て歩くことも出来ず、家に帰らずに山のふもとにある畑で休んで寝てしまったところを、なんと数匹の狼に食われてしまった。当時于江は16歳。彼は畑に残った父の靴を探しだし、大いに泣いた。そしてその日の夜、泣きつかれた母が寝てしまったあと、于江は金槌を懐に黙って出かけ、父が疲れて寝てしまったいうところに横になり、父を襲った狼が出てくるのを待った。つまり、父の仇を討とうというのだ。こうして夜半になった。するとそれまで曇っていた空が晴れてきて月が顔を見せた。そこで于江はわざといびきをかいて狼が出てくるのをまった。すると近くの草むらで音がし、何かが這ってくるような気配がしたので、于江は金槌をしっかり握りしめ、目を細めてそのほうを伺った。案の定、一匹の狼が出てきて、くんくんをにおいを嗅いでいる。そこで于江は相変わらずいびきを出して動かなかった。そこで狼はそばに来て于江の足を舐め始めたが、それでも于江は我慢して動かなかったので、狼はとうとう牙をむき出しにし、于江ののど元に噛み付こうとした。これに于江は驚き、顔をよけると右手に握っていた金槌で狼の頭を思い切り殴りつけた。すると狼はキャンと鳴いて頭から血を流し、その場に倒れた。そこで于江は、死んだ狼を近くのある穴に隠し、またもとの場所に戻ってさっきと同じように寝ているふりをした。するとまたも狼がやってきて、一匹目の狼と同じようににおいを嗅ぎ、足を舐めてから、于江ののど元に噛み付こうとしたので、于江はやはり金槌でその狼を殺した。そのとき、于江はかなり疲れていたが、やはり次の狼が出てくるのを待った。しかし、かなりの時間がたってもあたりは静かだった。そのうちに于江は寝てしまった。
于江は夢を見た。夢では父が出てきてこういう。
「于江や。お前は二匹の狼を殺してくれたな。ありがとう。しかし、一番初めにこの父を襲ったのは鼻が白い奴だった。これまで殺した狼ではないぞ」
目を覚ました于江は、そうだったのかと思い、そのまま鼻の白い狼が出てくるまでそこで夜の明けるまで待った。しかし、そいつは出てこなかった。仕方がないので于江は、殺した狼を家に持っていこうとしたが、母が怖がるかもしてないと重い、そのままで戻った。
こちら、夜中に黙って出かけた息子を心配して待っていた母は、戻ってきた息子の于江を見て泣いた。しかし、于江は黙っていた。仇を討ち終わるまでは母に黙っていようと思ったからだ。これに母は気の強い息子のことだし、訳を自分に言わないのはきっと何かあると思い、その上無事に戻ってきたのだらと何もいわずに涙を拭いた。
こうして于江は、父が話したかの鼻の白い狼を、次の夜も、その次の夜も待った。そして三日目の夜半になった。于江がこれまでのようにかの場所で寝たふりをしていると、近くの草むらでがさがさという音がしたので、于江が金槌を握り締める。すると不意に一匹の狼が草むらから飛び出してきて于江の足に噛み付き、草むらのほうへ引きづりはじめた。それはすごい力で、はいていた服が破れ、なんと狼の牙が于江の足に食い込んだ。それは痛かったが、負けてたまるかと、于江は狼をにらむと、それは夢の中で父が言った鼻の白い奴だった。それに体も大きい。これはいかん、狼を騙してその隙を狙うしかないと思った于江は死んだふりをして動かなくなった。こちら狼は草むらに于江を引きづり込み、于江が動かなくなったのを見て、于江のはらに噛み付こうとした。このとき、于江は両手で金槌を握り、力いっぱい狼の頭を何度も何度も殴りつけた。そしてくたくたになって手を止めると、その狼は頭をつぶされ事切れていた。于江はハアハアいいながらその場にしゃがんで長いこと休み、やっと立ち上がってその狼を引きずって家に戻った。これに母ははじめは驚いたが、于江の話を聞いたあと、「于江や、よくやったね。父さんは天国で喜んでいるだろうね」と涙流して喜んだ。次の日、于江は母と一緒に家に近くに父のお墓を立て、剥いだかの三匹の狼の皮をそばの樹の枝にかけておいた。
そのご、于江はたくましく育ち、もらった嫁と共に親孝行したという。
そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。
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