今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
みなさんは、黄果樹の滝をご存知でしょうか?黄果樹とは黄色い果実がなる樹のこと、それにその滝ということですね。この滝は中国西南部の貴州省あり、高さ77.8メートル、幅101メートルという中国最大の滝です。また、この黄果とは皮が黄色で味がすっぱいみかんのような果物で、滝の近くにこのみかんのような実がなる古い樹があることから、滝はこの名が付いたということです。
そこで、この時間はこの黄果樹の滝にまつわるお話をご紹介しましょう。
このお話、題して「大きい黄果の使い道」。
いつのことだっただろう。貴州に大きな滝があり、その近くの山腹に二人とも六十を過ぎたじいさんとばあさん夫婦が暮らしておった。この夫婦には子供がなく、また年中働いても暮らしは良くはならないので、二人は笑顔など見せない日々を送っていた。
じいさんは若いときにここへきて、樹を切って草を刈り、それで小屋を建て、そのあとばあさんと一緒になり、小屋のまわりに百本の黄果の樹を植えた。そして樹に実がなってから、それを何とか売って小銭に替え暮らしを立て、毎日仕事が終わるとじいさんは小屋の前に座り滝を眺めていた。
ある年、黄果の樹はどうしたことか、いつもとは違って花が多く咲き、その香りは遠くまで届いた。
「ばあさんや、多く実がなったらお前のそのぼろい服を新しいものにかえる銭ができるぞ」
「そうだね。それにあんたもおいしいもの買ってお酒も飲めるというもの」
このように二人は今年は多く実がなると喜び待ち望んでいた。
こうして黄果の花が散り、実がなるのを待つばかりになった。しかし、それからかなり経ったが、どの樹にも実がならない。これに夫婦は慌て、そのうちに気を落として飯ものどを通らない。特にじいさんは、小屋の前で座り、ため息ばかりついている。
と、ある日、じいさんが家の中で休んでいると、外からばあさんが駆けて入ってきて叫んだ。
「あんた!あんた!出てきてみてみなよ。ある樹に大きな実がなっているよ」
「え?大きな実?」
「そうだよ。早く見に行きなさいよ」
そこでじいさんは、ばあさんについていってみると、一本の樹になんと大きな実が一つだけなっているではないか。
「あれ?どうしてこんな大きな実がなるんだ?それに花が散って十何日しかたっていないのに、実がこんなに大きくなるはずがない」
「他の樹はどうだろうね?この樹だけかい?」
「そうだな、他の樹は・・」と二人は他の樹を一本一本見て回ったが、残念なことに実が成っているのはこの樹だけ。これに夫婦はがっかり。
「わしら貧しいもんには、福は来ないわい」とじいさんはまたも暗い顔でいう。こうして二人はしょぼんとして小屋に帰っていった。
さて、数日後、この小屋に珍しくお客さんが来た。客はどこから聞いたのか、黄果のいわれを耳にして遠くから足を運んだもので、年は三十過ぎ。かなりやせているが、異様なまなざしをしている。この客は小屋に入るなりいう。
「すまんが、お宅の黄果を売ってくれないかな」
「え?売るのはいいが、今年は不作でね。実が成ったのは一本だけで、それも一つさ」
「それはわかってる。あの実がほしいんだよ」
「ええ?あの大きな実かい?」
「そう、あの大きな実だ」
「いや、あれは種に使うから、売るわけにはいかないよ」
「そこを何とかして売ってくださいよ。金はいくらでも出すから」
「いくらでも出す?いったいいくらであれを買うつもりだい?」
「銀二百両でどうだい?」
「銀二百両だって?」
「ああ」
これにじいさんは声がでなくなった。そこで客は「うそはつかないよ」と付け加える。
じいさん、実はそんな大金を見たことがなく、それに一つの黄果の実だけで銀二百両だなんて、少しおかしいと思った。
「お客さんよ。馬鹿な話はやめてくれ」
これに客はじいさんが不満だと勘違いした。
「それじゃ、銀千両でどうだい?」と持っていた袋を前に置いた。
これにじいさんは面くらい、「ま、まった、まった」と目を回しそうになった。
「銀一千両でいいだろう?さ、これは前金の一部だ。ここに銀の塊で50両ある。さ、受け取ってくれ」と客はその袋をじいさんに渡す。我に返ったじいさんは、これは夢ではないと悟り、よこでぽかんとしているばあさんにかの実を樹からもぎとって来るよういう。これに客は少し慌てた。
「あ。まった。いま欲しいんじゃない」
じいさんは首をかしげた。
「じゃあ、お客さんよ。あの実は、いつ欲しいんだい?」
「そうだな。あと百日もしたら取りに来る。そのときに、必ず銀千両をを持ってきてあんたに渡すからさ、いいかい、じいさんよ」
「ああ、わかった。あと百日したら取りに来るんだね」
「しかし、言っておくが、じいさんよ。わたしは取りに来るまで、あんた、夜も昼も、あの実を守っていてくれよ。誰にも触らせず、それに鳥がつつきでもしたらだいなしになるかなね」
「え?夜も昼も側にいて守るのかい?」
「ああ。少しの傷もないものを銀千両で買うんだ。傷があったら、誰がこんな大金を出すもんか!それに鳥から守るためだといって、実を物で包んじゃだめだよ
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