これに道士は、いたずらはこれぐらいでいいだろうと池から上半身を出すとかの蛇は帯に戻り、服と共に池から上がってくる道士のほうにふわふわと浮かんでいった。そこで道士が服をまとい帯を締め、ごろつきを見てにゃっと笑い、どこかへ行ってしまった。
実はこの様子を何人かの通りがかりの人が見ていたので、このことはいち早く伝え広がった。こうしてこの道士のことは知れ渡り、地元の役人や金持ちが道士を客として屋敷に迎え、簡単な術を見せてもらうようになった。その後、州や府の役人までが道士を敬い始め、何か宴があると、決まって道士を呼び、ご馳走したあと金銭や土産を道士に送ったりした。
と、ある日、これまで道士を宴に招いたことのある役人や金持ちの屋敷にそれぞれ招待状が届いた。しかし、それは人が届けたものではなく、それぞれ応接間の卓上にいつの間にか置いてあったという。こうして役人たちは宴が設けられるという川岸の大きな東屋に来たが、なんと、中は料理どころか、卓や椅子すらなく、がらんとしていた。そこで中にいた道士を見てみんなは不思議な顔をしたが、これに道士が答えた。
「これはみなさん、ようこそ。実はわたしには供というものがおりませんので、あなた方のお供の者を使わしてもらえますかな?」
これに役人たちは「どうぞ、遠慮なく」といい、連れてきた供たちに道士の手伝いをするよう言いつけた。そこで道士は部屋の壁に筆で二つの門を描き、その門の戸を叩くと、なんと門の戸が中から開いた。これにみんなは驚いたが、道士が門の中を見るよう勧めたので、近寄って恐る恐る中を見た。すると中では多くのものが忙しく働いているような気配がする。しばらくして門の中から椅子や卓が浮かび出てきたので、道士は、きょとんとしている役人の供たちに椅子や卓を並べるようにいう。そこで供たちが椅子と卓を並べると、道士がいう。
「今すぐ中の者が料理を外に持ち出すのでそれを受け取って卓に並べてくれや。いいかな、中の者とは決して話をしてはなりませんぞ」という。これに供たちがうなずくと、中からはっきり見えないものが門の所までいい匂いのする多くの料理を持ってきたので、供たちは恐る恐るとれを受け取り、黙って料理を卓上に並べた。それはかなりの料理で酒などもたくさんある。
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