中国最後の「母系社会」を維持しているモソ人は、55の少数民族の一つ、納西(ナシ)族の支族とされています。総人口はおよそ4万人。四川省と雲南省が接するところにある瀘沽(ルーグー)湖を囲んだ村々に住んでいます。モソ語を話し、チベット仏教と地元従来の宗教が交じり合ったダバ教を信仰しています。
昔から、女性を一家の中心とし、家を継いでいく「母系社会」を維持してきました。日本でかつて行われていた「妻問い婚」に似通った「走婚」という結婚形態がとられています。お互いに好きになった男女も、ずっと一緒に暮らすことはせず、男性は夜だけ女性の家に通い、夜明け前に実家に帰ります。ただ今は、このような「走婚」は減りつつあり、漢民族と同じような結婚が増えてきたそうです。
モソ人の特別な文化と瀘沽湖の桃源郷のような美しさを見るため、多くの人々が訪れます。でも、現地を訪れた観光客の大部分はがっかりすると言われます。
モソ人の村で一年余り暮らし、モソ文化に詳しい香港の周華山博士は、「観光コースはワンパターンで、朝、麗江から出発。午後4時ごろ、瀘沽湖に着き。その後、船漕ぎ、騎馬、夕食、焚き火夕べ。翌日の早朝、また麗江へ。こんな短い時間で、モソ文化を理解する余裕はないだろう。モソ人の『走婚』への誤解もある」と語ります。
多くの人は、「モソ人の『走婚』は性的解放の一形態である」と誤解しています。また、ヤンエルチェナムというモソ人女性が書いた自伝「女の国から」(中国語「走出女児国」)は、その誤解を増幅させたといわれます。ただ周華山博士は「13才でモソ人の村を離れたヤンエルチェナムのモソ人文化への理解は決して十分ではない」と考えています。
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