そこで、少年は、どら息子たちをほったらかして村に入った。すると、かの犬が近くで待っていて、少年が来たのを見てある農家の庭に入っていった。これに少年が続くと、犬は庭の隅の垣根の下に掘った穴に落ちた。これは大変と少年が穴に近寄って中を見ると犬は死んでいた。
「うん?どうしたんだ?」と首をかしげていると、農家から一人のばあさんが出てきた。
「誰だね?そこにいるのは?」
このばあさんの問いに少年は死んだ犬のことを聞いた。
「ああ、うちの犬かね。犬は老いぼれて昨夜死んだばかりさ。これから穴を埋めようと思っていたんだけどね」と答えた。そこで少年は犬にお辞儀してからその場を去り、帰途を急いだ。
で、その日の夜、少年の夢に自分の可愛がっていたあの犬が出てきた。
「ご主人さま、あなたさまのご恩はこれでいくらか返せたと思います。これから私は遠いところに行き、もうあなたさまの夢には出てこられません。ご主人さま、強くなって達者にお暮らしくださいませ。ではさようなら」
このときから、少年は人が変わったように学問と武術に励み、毎日庭にある愛犬の墓の掃除をして、犬に感謝した。そして少年はのちに悪い奴らが怖がる武芸にたけた学者になったという。
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