李約はこれを聞いて、しばらく考えていたが、相手が人間でないことを悟り、黙ってそこを離れようとした。すると老人は、また同じことを繰り返し言う。
これに李約は「これは、逃れられそうもない。いっそのこと、こいつを負ぶって、隙を見てやっつけてしまおう。それ以外に方法はなさそうだ」と思った。
そこで「仕方ないな!じゃあ、しばらくだけど、爺さんを負ぶっていくことにしようか」と答え、爺さんに背を向けしゃがんだ。すると爺さんは杖をすてて李約の背中に負ぶさってきた。そこで李約が立ち上がると、年寄りなのにかなり思い。
「うん?じいさんよ。歳の割には重いね」
「そうかい?すまんのう」
これを聞いた李約は、すばやく右手で懐から短剣を抜き出し、それを老人の背中に当てた。
「な、なんじゃい?旅の人、そんなものをわしの背中に当てて」
「ふん。じいさんよ。あんたの頼みで負ぶってやったんだ。おとなしくしていな」
これに爺さんはいくらか笑って「はいよ。おとなしくしてますよ」と答えた。そこで李約は、風邪を引いているにもかかわらず、早く歩き出した。
「おお。旅の人。あんた歩くのは早いね」
「ああ、いつもこんなものさ」
「へえ。飛脚かい?」
「ああ、そんなところだ」
すると、爺さんが黙ってしまったので、李約は歩き続けた。こうして東の空が明るくなり始めた。すると、それまで黙っていた爺さんが、「旅の人、ここらで下ろしてくれ」という。しかし、李約はこれには答えず、黙って歩いていた。すると、爺さんがまた、下ろしてくれという。が、李約はなおも黙っている。そして爺さんの背中に当てた短剣をぐいっと押した。すると、煙のようなものが背中から立ちこめ、何かが地べたに落ちた。そこで李約が落ちたものを見た。それは棺桶の蓋のかけらであった。
「ふん、奴さん、逃げたな」と李約はため息ついて、知らぬ間に出ていた冷や汗をぬぐい、また、歩き出したが、その後は何も起こらなかったという。
そろそろ時間のようです。来週、またお会いいたしましょう。
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