さて、このように時が経つにつれ、影は昼は鄧乙に取り付いているものの、夜になると、鄧乙から離れ、勝手に動き回るようになった。しかし、鄧乙から離れた影は鄧乙にしか見えなかった。そのうちに、鄧乙の行いが以前より大胆になり、時にはおかしなことをやりだすものだから、隣近所は不思議がり、それを役人に告げたので、役人は鄧乙を役所に連れていき、きつい口調で調べ出した。そこで怖くなった鄧乙がことの仔細を話す。事を聞いた役人ははじめは信じなかったが、興味深く調べを進める。が、その場では何も起こらないので鄧乙を家に帰すしかない。
もちろん、影のほうも、これは危ないとその後は勝手な動きはしなくなった。が、役人は下役人を遣って鄧乙の様子を見張らせていたので、夜になって鄧乙の影がおかしいという報告を聞いた。しかしどうしようもない。
そのうちに、影はどう思ったのか、役人たちを馬鹿にして勝手に動き出したので、役人たちはびっくり。しかし、影であるから誰も捉えることはできない。そこでみんなは鄧乙のことを化け物だと呼び出した。
こうして数年がたった。しかし鄧乙の影は悪いことをしたわけでもなく、みんなは見て見ない振りをするようになった。
と、ある日、影が鄧乙にいう。
「もうあんたと一緒にいるのが飽きてきたよ。悪いけどおいらはあんたと別れるよ」
「ええ?俺から離れて行っちまうのかえ?どこへ?」
「そうだな。ここからものすごく遠いところさ。じゃあ。影がなくとも達者で暮らしてくださいよ。影が主人を離れるのは失礼だが、いかなきゃならないんだよ」
影はこういい残すと、どこかへいったしまった。それからは鄧乙には影がないので、影なし男とよばれたそうな!うん!
そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。
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