清の乾隆年間、山東にある金持ちがいた。ある日の夜、この金持ちの屋敷の屋根にどうしたことか火が付いたので、屋敷のものがあわてて火を消したが、どうもその原因がわからない。こうしてそのままとなり数日が過ぎたある日、主の金持ちが応接間にいると、書斎のほうで大きな音がし、驚いて行ってみると、自分が大事にしている骨董品がすべて地べたに投げ出され、粉々になっているではないか!
「誰だ!こんな真昼間から!それともお前は化け物か!いいか!もしそうなら、お前のことを神に言いつけるからな!」
すると天上から答えが来た。
「何を言いやがる。お前は普段からわしの息子や孫を多く殺しているではないか!わしはお前を憎んでいるんだ。いち早く仕返ししたいと思っていたんだよ。これまでお前の屋敷に潜んでもう八年になる」
「なんじゃと?お前はいったい何者だ!」
「うるさい!わしの話をよく聞け!これまでお前の父や祖父は良いことをしており、やたらと殺生などしなかったんだ。しかし、お前はわしらキツネを、狩が好きだといって多く殺しやがった」
「お前はキツネか!!」
「そうだ。わしはキツネだ!お前は、父や祖父と違って自分勝手なことばかりしてきた。こうなりゃあ、お前を守ってくれる神様などいるはずがない。それをわしは待っていたんじゃ!お前はわしらキツネだけでなく、ほかからも憎まれているんじゃ!覚えておけ!」
天上からの声はここでなくなり、後は静かになった。驚いた金持ちは、落ち着きを取り戻し、座ってからこれまでのことを細かく振り返ってみた。が!自分はあくどいことをした覚えはないし、人を騙したりもしていない。ただ、自分は狩が好きで一年に何度かは狩に出かけ、このあたりの農家の鶏やウサギをかっぱらっていくというキツネをかなり退治している。ここまで考えた金持ち、ため息をついた。
「人間が化け物となった獣と戦うにはしっかりした品格がなくてはならんと昔の人がいうが・・・。何とかしてこの災いを防がないと・・・」
そこで金持ちは、何かを決心し、さっそく家族や屋敷のものを書斎に集め、いまさっきのことをみんなに話した。これを聞いてみんなはびっくり。そこで金持ちが言う。
「いいか!これから起きるかもしれない災いを防ぐため、みんなは、これまでの自分の過ちを認め、それをしっかり改めるのだ。いいか!みんなは自分以外の者の良いところを学び、己の悪いところを直して、穏やかに暮らしていくんだ。そうするしかない!わしはこの家の主だ!、わしが最初にそうする。これはこの家の子孫や、屋敷で働く者たちにとっても為になるはず。もし、わしがいま言ったとおりにできなければ、出家するわい!」
金持ちはこういい終わると、これまで屋敷で起きた多くの面倒やいざこざの理由は自分にあるといい、その場で正直に謝り、家族や屋敷のものをかばい、その上、いつも変なうわさを作り、ことを起こしてばかりいる数人の下のものに閑を出したりしたので、家族や屋敷の者たちは大いに感動し、それぞれ、これまでの自分の行いを反省し、これからは何をやるにしても、考えてから事を運び、屋敷のみんながむつまじく暮らしていくことを誓い合った。
そこで金持ちは、豚を数頭殺し、これをこれまで殺してきたキツネへの供養として庭に設けた壇に置いた。
「キツネどの!これからは悪いことはぜず、害を加えるようのことはいたしません!」と庭でみんなして誓った。
こうして何日が過ぎたある日の夜、金持ちが書斎で本を読んでいると、不意に天上から聞き覚えのある声がした。
「憎らしいやつめ!この前はお前に余計なことをしゃべってしまったらしいな。お前がそこまでやるとは思わなかったからな。悔しいが、いまとなっては多くの神がお前のことを心配し初めてな。わしには手が出んようになったワイ!」
こうしてその後は、何事も起きず、それに屋敷ではみんなが心を一つにしたので、それからというもの、この一族はかなり大きくなったという、うん!
そろそろ時間のようです。では、来週、又お会いいたしましょう。
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