次のお話です。
「親孝行もの」
いつのことかわからん。浦城生まれの商人が、旅の途中で重い病にかかり、なんと死んでしまった。この商人には妻と老いた母がいたが、妻は夫のことを済ましたあと、なんと夫が残していった金をこっそりと隠し、体の悪いしゅうとめに冷たく当たり始めた。
それから半年たったある日の夜、死んだはずの商人が家の戸を叩いた。びっくりした妻が震えながら見ていると、それを横目で睨んだ商人は母の部屋に入り、涙を流し跪く。
「かあさん!」
「おまえ!お前は死んだのではないのかえ?」
「はい、私は確かに死にました」
「では、どうしてここへ?」
「実は妻がひどいことをしましたので、我慢できずにあの世で閑をもらい戻ってきました」
「ひ、ひどいこと?」
「はい」と商人は妻がお金を隠し、母に冷たく当たっていることを話した。これに母はびっくり。そこで商人が妻を殺してあの世に連れ帰るというと、母はしばらく考えたあという。
「息子や、そんなことをしたら、この母さんが殺したのだと思われるに決まっているよ」
これを聞いた商人は、まったくそのとおりだと思い、金はどこに隠したあるかを母に言うと、妻を実家に戻してくるとい言って、恐ろしくなって縮み上がっている妻を連れて外に出た。そこで母が戸のところへ行ってみると、月の明かりの下で、自分の嫁一人が、誰かに驚かされるようにして実家に帰っていく姿しか見えなかったという。
そろそろ時間のようです。来週、またお会いいたしましょう。
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