中国北部の内蒙古自治区では、昔から遊牧生活をしながら暮らす人たちがいます。少数民族のモンゴル族です。このモンゴル族で結成している演芸団体「ウランムチル」があります。ウランムチルは自治区内だけでなく、全国さらに世界で活動し、草原の息吹を届けています。
1950年代の末、内蒙古自治区の草原地域では経済発展が遅れ、交通も不便でした。牧畜民たちは、世界がどういう様子なのかまったく知らず、放牧以外になにもすることがありませんでした。
それで、歌や踊りをみんなに楽しんでもらえるような、演芸団体を作ったらどうかと思いつきました。さっそく、文芸愛好者や、歌や踊りが特に上手な人を選んで演芸団を組みました。名前は、「ウランムチル(赤い新芽)」にしました。
資金などの問題で、最初は、メンバーはたった11人、楽器も5点しかありませんでした。でも、メンバーたちはみんな芸達者で、歌ったり踊ったりしながら楽器を演奏するなどしてやりくりしていました。
結成後、内蒙古自治区の各地をまわって演芸を披露し、だんだん有名になっていきました。1960年代には、内蒙古自治区のすべての県に、「ウランムチル」の支団体が置かれ、規模を拡大させています。
その作品は、牧畜民たちの日常生活の音や動きをアレンジしたものが多いです。またウランムチルは、単なる演芸だけでなく、科学知識の普及や農業機械の修理、美容や理髪などのサービスも提供する、多機能の団体に発展しています。このため、地元の住民から大変人気を呼んでいます。ウランムチルが公演に来ると聞いたら、みんなで何十キロも馬を走らせ、彼らを迎えに行くそうです。
「ウランムチルの公演は、いつも楽しみにしている。公演が終わっても、みんな全然帰ろうとせず、ウランムチルの団員を囲んで、一緒におしゃべりをするのだ」(牧畜民・アラタさん)
ウランムチルは、国内はもちろん、世界20カ国で公演したこともあります。彼らは公演を通して、世界各地の人々にモンゴル族の文化を伝えています。
「ウランムチルが結成されて40年間、私たちは内蒙古自治区で5000回以上の舞台をやってきた。そして活動場所を全国各地に広げ、さらには、アジアやヨーロッパ、アフリカなど20余りの国を訪れた。これからも、世界各国の人々に草原の息吹を届けていきたいと思う」(ウランムチルのメンバー・キルムトゥさん) (鵬)
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