道教は「道」を最高信仰として、長生きや仙人になることを最終目標とするもので、中国で生まれ育ってきた独特な宗教です。道教の思想は秦の時代の前の祖先崇拝を源とし、宗教団体として正式に創設されたのは、漢の時代の末期です。2000年あまり前の哲学者である老子は道教の代表人物で、彼が書いた「道徳経」は中国の重要な古代文化遺産です。「道徳経」は全部で81章からなり、およそ5000字の著作ですが、非常に広大な内容が入っています。道徳経には、道経と徳経二つの話があります。道経は主に、宇宙の根本であり、天地万物変化の根本的な道理、或いは陰陽変化の根本について書かれています。徳経は人間の世の中の根本的なこと、或いは、人間はどのように世の中に生きているのかという話です。その中には、ただ哲学的なことだけでなく、国を治める道、養生の道など、智恵の学問です。また、中国の古代文化に与えた影響も大きかった。
漢や唐の時代の一部の指導者はその思想を国を治める理念としていました。中国古代の政治や哲学、宗教、軍事、文学、芸術ないし中華民族の性格や民族精神の形成に大きな影響を与えました。また、それだけでなく、多くの海外の哲学者や科学者、政治家、企業家も老子の思想に大変大きな興味を示し、また、その中から啓発を受けたということです。「道徳経」は海外でも高く評価され、30あまりの外国語に翻訳されました。
道教は長い年月の発展を経て、多くの流派となりました。また、各流派の融合や合併によって、今の「正一道」と「全真道」この二つの流派となっています。現在、中国大陸には全真派と正一派の道士を合わせて、およそ5万人あまりいます。また、正式に一般公開された道教のお寺が5千箇所あります。
世界がグローバル化されつつある今日、社会が急激に変化しています。ところが、人類社会は巨大な進歩を収めると同時に、環境問題など多くの課題を抱えています。「道徳経」は現代人にとって、自分自身の問題や人間と社会、それに人間と自然との関係、さらに国と国間の関係をいかに正しく処理すべきかについて、啓発的な意義があると見られ、西安で国際フォーラムが開かれたのです。
今回のフォーラムには中国大陸、香港やマカオをはじめ、世界17カ国から来た代表350人あまりが参加しました。また、全国政治協商会議の劉延東副主席ら国の指導者および陜西省の省長らも出席しました。熊本県立大学の山田教授と大阪府立大学の大形徹教授が日本側の代表として、今回のフォーラムに出席しました。
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