そこで金持ちは、何とか夏さんを説得し、何人かの商人と共に商売するよう勧めた。こうして夏さんはそのとおりにしたものの、数ヵ月後になっても商いはうまくいかず、ただ損しなかっただけに終わった。そこで夏さんは借りた金を金持ちに返そうとしたが、金持ちはそれを受け取らず、もう一度頑張れと夏さんを励ました。こうして一年がたった。今度はうまくいったらしく、夏さんはかなり儲けたあとふるさとに帰ることにした。しかし、荷物を載せた船が途中で大風にあってひっくり返ったので、大きな損をした。残った金と荷物はあわせて一年前に金持ちに借りた金額より少し多いだけだった。そこで夏さんは、これまで一緒に商いをしてきた人々に「天はわたしに金を儲けさせたくはないみたいだ。誰もどうすることは出来ませんよ。すまなかったね。骨折り損にくたびれもうけさせてしまったね」と払うべき金を払い、残った金を持ってふるさとに戻り、金持ちにわけを話して金を返した。金持ちはこれを聞き、夏さんは運が悪いといい、また考え直して商いするよう勧めたが、夏さん、今度はこれを断り、家に戻ってまた野良仕事を始めた。そして夏さんは、常に「わたしはどううしてこんなに運が悪いのだろう」とため息をついていた。
こうして日がたったある日、一人の巫女がやってきて、その占いがかなり当たるというので人気があった。これを聞いた夏さんは、「どうして自分の運は悪いのだろう。どうにかこれを変えることは出来ないのだろうか」と思い、ある日、この巫女のところに来た。巫女は老婆で、一軒家をかり、中はきれいに片付けてあって、部屋の真ん中に夏さんの知らない神の位牌を置き、線香の煙が立ち込めていた。これをみて夏さんは、まずは神の位牌に礼をした。
「あんた、何を占いたいのかね?」
「あのう・・・。実はこういうわけなんです」と夏さんはこれまでのことをすべて巫女に話した。すると巫女は遠慮せずに言う。
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