それから二十数年がたった。この年、夏さんは五十三になったが、二十数年前の巫女の占いを忘れてはいなかった。で、この年の春、夏さんは病にかかり、春の種まきなどは息子たちに任していたが、病がよくなると日照りが始まり、多くの作物は枯れてしまった。そして秋になってやっと雨が降ったので、残った粟などを植えるしかなかった。しばらくしてまた日照りが続き蕎麦や豆類はいずれも枯れてしまう。しかし粟だけがうまく育ったようだ。そのご、天気がよくなり、粟がとても多く獲れたので、翌年はかなりの不作だったが、夏さん一家は腹をすかすことはなかった。このとき、夏さんは、また、かの巫女の話を思い出し、自分の運がそろそろ回ってくるのではないかと思い、いっそのこと久しぶりにある金持ちから金を借り、それを基に小さな商い始めたが、それがあたってかなり儲けた。そこで友人たちが大きな商いはじめろと勧めたものの、夏さんはそうしなかった。やがて五十七になったときに、夏さんは家の壁を直したいと思って古びた壁の下を掘ったところ、なんと大きな蓋のついた鉄鍋が出てきたので、これはなんだと開けてみると、銀がいっぱいに詰まっているではないか。そこでそれを部屋にもち帰り、驚く妻と一緒にかぞえてみると、なんと千三百二十五両もある。そこで夏さんは二十数年前に巫女がいったことを妻に話し、かの巫女の占いが当たったのかもしれないと喜んでいるときに、隣に住む昆さんの妻が、丁度物を借りに来た。家の中からこそこそ話す声がするので、この妻は面白半分に声をかけずに、戸の隙間から中を覗き、なんと夏さんが掘り出した沢山の銀をこっそり見てしまった。この妻は驚きの声を押さえ、さっそく家に帰り、夫の昆さんにこれを告げた。これを聞いた昆さん、急に夏さんが妬ましくなり、さっそくこのことをこっそりと役所に告げた。