これを耳にした県令はかなりの欲張りもので、この銀を何とかして手に入れようと夏さんを役所に呼び、手下を部屋から追い出して二人だけになったときに、夏さんが容易に手に入れた銀を出せと嚇かした。これを夏さんが断ると、県令はありもしない罪を夏さんになすりつけ、なんと牢獄に掘り込んでしまった。これを耳にした妻が慄き牢獄へ行くと夏さんが言う。
「しかながない。いくら悪いことをしていなくとも、運が悪いときは悪いものだ。あの銀を全部あげてしまおう。命には代えられないよ」
これに妻はもちろん同意、こうして夏さんは掘り出した銀を残らず県令に渡したので、翌日、牢獄から出され家に帰った。
こうして次の年になった。かの県令はどうしたことがその上の職についてまもなく急病にかかり、あっけなく死んでしまった。そこで県令の妻は小さな金目のものだけをもち、あとのもてないものは安く売り払って古里の帰っていった。実は安く売り払った物の中に幾つもの油を入れる樽があると聞いた夏さんは、当時は樽がほしかったのでそれらを安く買い取り、荷車で家に持ち帰った。そして蓋を開け始めたが、どうもそれぞれの樽に何か入っているようだった。しかし、樽はかなり古く、中から変なにおいがするのでさっそく樽を洗い、中のものを出してみたところ、いずれもから何かを入れた汚い袋が出てきた。
「なんだ?これは。なにが包んであるんだ?」と夏さんが開けてみると、それぞれの袋が幾つもの銀塊が入っているではないか!こうして数えるとあわせて12個もの銀塊が手に入ったことになる。
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