そこで劉中は急いで、手足をお坊さんに解いてもらい、あれはなんだ?とお碗の中をのぞいた。彼が吐き出したのは長さ三寸くらいの眼と口が付いた動く太いミミズのような肉色をしたものだった。
「なんだ?これは?」
「それが酒の虫でござる」
「これはお坊さま。ありがとうございました。」とお礼にと金銭を紙に包んで渡そうとしたが、お坊さんはそれを受け取らない。
「金銭はいりませぬ。ただ、その酒の虫を頂戴できますかな。」
「え?こんなものを?で、これななんですかな?」
「これは、酒の元でしてな。甕に水を入れてこの虫を放してかき混ぜますと、甕の水が酒になりまする。」
「え?本当ですかな。なにしろ。こんな気持ち悪い虫を私の体内から追い出してくだされたのです。それが御所望でしたら、どうぞ」
こうしてお坊さんは、劉中が吐き出した虫を小さな入れ物に入れてどこかへいってしまった。
それからというもの、劉中はどうしたことか、酒の匂いを嗅ぐと吐き気を催すので酒をやめてしまい、また太っていたのが痩せはじめ、かの肥えた耕地の作物もあまり獲れなくなり、やがては家計も苦しくなって、果ては三度の飯を食うにも困るようになってしまったと!!やれやれ!
本当に酒の虫っているんでしょうかね。いくら飲んでも酔わない人の体内には酒の虫がいるんですって!昔の酒豪たちは、どうでしょうかね?
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