次は「酒の虫」です。同じく「聊斎志異」からです。
山東の長山に劉中という酒好きの住んでいた。彼は酒を飲むと決まって一甕飲んだが、酔っ払ったことはこれまで一度もなかった。それに彼は肥えた耕地をかなりもっていたので、その半分の耕地にものを植えるだけで収穫は多く、かなり裕福な暮らしをし、大酒飲みだからといって暮らしが困るとは思わなかった。
と、ある日。西域からあるお坊さんが来て、彼をじっと見たあと言った。
「これはこれは、実に言いにくいのですが、あんたはおかしな病にかかっておりますぞ」
「とんでもない。私に病などはない」
「あんたは、酒をいくら飲んでも酔いませんな」
「その通り」
「それは、あんたの体内に酒の虫がいるからですぞ」
「え?酒の虫?それはどうして治すのですかな?」
「それはいたって簡単。薬などはいりませぬ。手足を縛り、日中にお日様に下で地面にうつ伏せになりなさい。そして、頭の前の近くに上等の酒を一碗置くのです。そうすれば必ず治りますからな」
これを聞いた劉中、早速、いわれたとおりにした。
すると、暫くして暑さと喉の渇きでたまらなくなり、すぐにでも酒が飲みたくなり、近くにある一碗の上等な酒の香りがして、喉から手を出したくなるほどだったが、手足を縛ってあるのでどうにもできない。と、そのとき、喉が急に痒くなり、何かこみ上げてきて、あっという間に何かを吐き出し、それはかの上等な酒が注いであるお碗に入った。
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