「なに、なに。気にすることはない。私は酒を嗜むのが癖になってね。みんなは私のことを酒気違いと馬鹿にしている。しかし、お前は私の知己だ。もし、お前が私を信じるなら、私の酒友達になってくれ」
「私をあなたの酒友達に?」
「そうさ、お前はいつ来てもいいよ。お互いに信じようじゃないか」
これを聞いたキツネは、喜んで同意した。そして車さんはまた人間姿のキツネと一緒に寝たが、朝になって車さんが目覚めるとキツネはもういなかった。
さて、その日の夜、車さんが酒肴を用意してまっていると、かの人間に姿を変えたキツネが約束どおりやってきた。そこで二人は飲み始め、いろいろとはなし始めた。キツネは相当の酒飲みであり、冗談もよく言って車さんを笑わし、このような日が数日続いた。と、ある日の夜。酒を飲んでいたキツネがいう。
「車さん。いつもあなたのうまい酒をごちそうになっていますが、私はどうお礼していいのやら」
「何を言う。酒を飲ましてもらうぐらいで、気にすることはない」
「でも、お宅はそう裕福ではないのでしょう。こうして毎日酒を飲むだけでもお金がかかりますからね。私がなんとかしますよ」
こちら車さん、これに遠慮したが、狐は任しておいてくださいといって聞かない。
そして次の日の夜。キツネがいつものようにやってきて車さんにいう。
「実はね。お宅から東南へ七里いったところの道端にお金が落ちていますから、車さん、早く取り行ったら?」
そこで、車さんは半信半疑で、その日の夜明けに、キツネが言う場所に行くと、道端になんと二両の金が入った財布が落ちていた。そこで車さんはその金で美味しい酒と肴を買い、その日の夜、キツネをまった。
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