今日は、酒にまつわる中国の昔話をご紹介しましょう。
中国の清の時代の怪異小説集「聊斎志異」から「酒友達」。
むかし、車という苗字の読書人がいて、まあまあの暮らしをしていた。ここでは車さんとよんでおこう。彼は一日三食酒を飲み、特に寝酒を飲まないと寝られないというので、床の横には必ず酒壷を置いていた。
とある日の夜半、車さんが寝返りすると、自分の横に誰か寝ている。
「うん?なんだ?」と手を伸ばしてみると、それはふさふさした毛に覆われているもので、猫よりも大きい。そこで車さんはこっそり起きて明かりをつけたところ、なんと床には一匹のキツネが酒臭い息をして寝ている。そして車さんは床の横においてあった酒壷を取って振ると何と空っぽ。これには車さんも思わず可笑しくなった。
「ははは!なんだい!こいつはわたしの酒友達だな」と独り言をいい、酒を食らって気持ちよく寝ているキツネを起こすのも気の毒だと思い、自分の服をかけてやり、また、こっそり床に這い上がって、寝ているキツネを片手に抱き、明かりを小さくして、キツネの様子を見守っていた。やがて明け方になってキツネは目が覚めたので、車さんが声をかけた。
「気持ちよく寝ていたな。」
これを聞いたキツネ、驚いてその姿を年若い書生にすばやく変えて、床かから下り、跪いて自分が殺されなかったことに礼をいい、また、車さんの酒を盗み飲みしたことを謝った。
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