するとキツネがやってきて「お宅の庭のうしろにある穴倉の下に銀銭が埋まってますから、早く掘りに行きなさいよ」と勧めた。
そこで車さんが、翌日、その穴倉に入り掘って見ると、なんと多くの銀銭が出てきた。
「金ができたぞ。これからは酒を買う金には一応困らなくなった」
「いえいえ。それだけでは、長続きしませんよ。また私が何とか考えましょう」
キツネがこういうので、車さんは安心し、二人はまた飲み始めた。
さて、数日後にキツネが言う。
「車さん、いま市場では、そば麦が一番安いんですよ。そば麦はそのうちに金になりますから、車さん、たくさん買いだめしなさい」
「そば麦をか?」
「そう、そば麦をたくさん買いだめするのです」
車さんは、キツネに言われたとおり、まとまった金もって市場にいき、当時は誰も気にかけないそば麦を、安い値段でなんと50石もかったので、市場にいた人たちから笑われた。
ところが、ここら一帯は暫くして大旱魃となり、植え付けてあった穀物や豆類もすべて枯れてしまい、今では麦だけが育つというので、車さんはこれまで買っておいたそば麦を売り、元金の数十倍の利を上げたのだ。
こうして、車さんは儲かったお金で多くの田畑を買い、キツネの言うとおりに麦を植えると、麦は豊作。コーリャンを植えるとコーリャンもすごい豊作。こうして車さんはキツネの言うとおりに事を運び、金持ちになっていった。
また、車さんとキツネの仲もますます深くなり、キツネは車さんの妻のことを義姉さんとよび、車さんの子供を可愛がった。
そしてかなりの歳月が過ぎ、車さんが亡くなった。すると、かのキツネもそのときから姿をに見せなかったという。
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