次は、「蛇足」。これは「戦国策」という本からです。みなさんもご存知ですね。
昔、蘇の国のある貴族の屋敷では、祖先を祭る儀式がおわり、手伝いに来た食客たちへの礼として供え物であった上等な酒一壷が贈られた。
「なんだよ。大きな声ではいえないが。旦那はけちだね。こちらはこんなにいるというのに礼として一壷の酒だけとはねえ。」
「そうだよ。けちな旦那だ」
「でもよ。仕方ねえだろう。一壷の酒をここにいるみんなに分ければ、一人いくら飲めるんだい。でも一人で飲めば十分あまるからな」
「おう。こうしようよ。みんなで地面に蛇を書いて、一番先に書き終えたものが、この一壷の酒を独り占めにするんだ」
「おう!そうしよう。そうしよう」
ということになり、食客たちは早速地面に蛇を書き始めた。
やがて、一人が一番初めに書き終わったので、かの酒壷を手にし飲もうと思ったが、急に何を思ったか、「なんだい。みなさん遅いねえ。俺にはまだ足を付ける余裕があるんだぜ!」と書き終わった蛇になんと四本の足を書き加えた。
すると、もう一人の食客も蛇を書き終わり、彼の書いた足がある蛇を見て、彼の手から酒壷を奪い、「なんだよ!蛇には足なんかないんだぜ!それは蛇じゃないよ」とゴクゴクと喉を鳴らし、うまそうに酒を飲み始めたわい!
そう、蛇の足を付けた食客は、一番早く蛇を書き終えたものの、余計なことをしたので。せっかく手にした酒を飲む機会を失ったんだ!はい!
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