中国では、農村というと、「貧乏」、「都会より発展が遅れている」などと思われてきましたが、観光業がさかんになり、政府が農業に対する優遇政策が実施されたこともあり、農村の経済は急速に発展しています。一部では、別荘や自家用車を持つ家庭も見られます。
収入が増え、都会並みの生活も楽しめるようになっても、「心の豊かさ」はまだ不十分です。映画館や、劇場などはともかくとして、歌や漫才などあまり場所をとらない演芸で使われる小さな舞台さえ少ないのが現実です。
こうした状況に気づき、中国各地の演芸団体は、農民たちの生活を充実させ、また、中国の伝統文化を伝えようと、80年代から「送戯下郷(農村へ歌や踊りなどを公演に行く)」という試みに取り組んでいます。農村や山村を巡って公演を行い、歌や踊りのほか、漫才、京劇、演劇なども披露します。公演のかたわら、地元の演芸クラブとか、小劇団の指導も担っています。
「ベテランの歌手や俳優たちが、公演に来てくれて、私たちは大いに助かったと思います。彼らは、演芸などをただ披露するだけでなく、公演の合間、私たちの歌を聞いて踊りを見て、足りないところとか、改善できる点を丁寧に教えてくれるのです。」(北京市郊外農村の舞踏クラブの責任者・陳永禄)
また、それらの演芸団体が農村を訪ね、公演・指導を行うことによって、農民の暮らしに触れ、逆に農村から創作のヒントをもらっています。
「農民の普段の生活をテーマとする踊りや演劇などを作る場合、部屋の中で考えるだけでは、創作ができないと思います。農村の生活を体験し、農村のいろんなことを自分の耳で聞き、自分の目で見て、客観的なイメージを描き、それを原型に作ったものこそいい作品だと思います。」(北京市文学芸術界連合会・朱明徳副会長)
最初、農民たちの「心の充実」を目指して「送戯下郷」を発足させましたが、それを続けているうちに、農民の生活が身近に体験でき、農村に関する創作が促されることになっています。
中国文化の発展において、お互いに補い合う都会と農村。その交流がますます広がるよう祈りたいです。
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