「夜中の三日月」は遼寧省の代表的な民謡です。歌の内容は、世界で有名な悲劇の恋物語「ロミオとジュリエット」の中国語版ともいわれる「梁山伯と祝英台」（蝶になった恋人たちのお話）によるものです。

　東晋（西暦317年から西暦420年まで）の時代に、豊かな家庭に生まれ育った少女、祝九紅は親の反対を押し切り、杭州のある書院（塾）に通おうとします。しかし、当時、それらの私塾は男性以外を受け入れてくれませんでした。やむなく、彼女は名前を祝英台と変え、男装して入塾を果たしました。

　彼女は、そこで梁山伯という少年と運命的な出会いをし、義兄弟の契りを結びます。山伯に心を惹かれた英台は、義兄弟では飽きたらず、自分が女であることを悟らせようと試みるようになりました。しかし、勉強は良くできても、鈍感な山伯はそれに気付きませんでした。私塾での勉強を終え、家に帰った英台を待っていたのは、その土地の有力者の息子・馬文才との結婚話でした。ちょうどその頃、梁山伯は、祝英台が実は女性だということ、そして彼女が梁山伯のことを愛していたことをようやく知ったのです。祝英台の家へ赴いた山伯でしたが、家の中に入れてもらうことさえできず、門前払いとなりました。その後、山伯は病気で亡くなりました。英台は、仕方なく馬文才との結婚を受け入れました。しかし結婚式当日、馬家に向う途中で山伯の墓参りをすることを父に認めてもらったのです。

　山伯の墓の前まで来た英台は泣き崩れました。すると突然、風雨と共に激しい地響きが起き、お墓が真っ二つに裂けたのです。英台は裂けたお墓の中に身を投じました。そして、しばらくすると、お墓から二羽の蝶が仲良く飛び立っていったのです。

　歌詞：　

　「夜七時ごろ　見上げると　東の空に三日月

　うわの空で『詩経』を読んでる梁山伯は

　祝九紅のことばかり思っている

　十年間　歳月をともに過ごした

　長いお付き合いの愛する人

　長亭で別れた

　夜が更けると　月は南の方に回ってた

　梁山伯と祝九紅は永遠の愛を誓ったけど

　二人の願いは叶わなかった

　憎いのは祝九紅のお父さん

　二人を別れさせた

　ニワトリが鳴き　朝がきた

　梁山伯はひそかに祝九紅の家に潜り込み

　九紅と会い、涙を流しながら、気持ちを伝えた

　二人はしっかり手を握って、放さなかった

　仲良しの二羽の蝶々のように

　自由に空を飛んでいく

　（担当：藍暁芹）