この時間は、杭の杭州に伝わる昔話「杭州の第一泉」をご紹介しましょう。
「杭州の第一泉」
むかし、くいの杭州には井戸が一つもなかったという。当時、ここら一帯は雨が多かったが、洪水などにはならず、家々では雨水をうまく使って暮らしていた。
と、ある年、天気が急に変わり、日照りが続いて雨が降らなくなり、地元では湖の水までは枯れてしまい、田畑にはひびが入り、人々は飲み水にも困るようになった。
そこで役所では、民百姓が騒ぎを起こすのを恐れ、多くの道士を呼んで、いろいろと雨を乞う儀式をやり、みんなが跪いて天を拝み雨を求めた。
ある日、一人の爺さんが杭州の町にやってきて、みんなが跪いて雨を求めているというのに、この爺さんは立ったままでいる。これに気付いた役人はかなり怒り、下のものにこの爺さんを役所まで連れてこさせ、命令に従わないという罪名をなすりつけ、縛り首にするよう命じた。
こちら爺さん、これを聞いても少しも恐れない。
「はははは!わしは今年で八十になるので、いまあの世へ行っても惜しいとは思わん。じゃが、町の人々は飲む水もなくなりそうになり、役人までもまもなく喉が渇いて死んでしまうかもしれんのじゃぞ!」
これを聞いて役人は怒鳴る。
「何をほざいておる!死に際になって負け惜しみを言うな!」
「お前さんたちは、物分りがわるいのう。日照りが続き、みんなが困っておるときにどうしてこの年寄りのわしが町にきて、跪き雨乞いしている人を前に平気で立っておったのか。よく考えてみなされ!」
これを聞いた役人、「それもそうだ。もしこの爺さんが雨をもたらしてくれば、これに越したことはない。もしうまくいかなくてもそのときに、この爺さんを縛り首にしてもいいな」と思った。
「なんじゃと?爺さんはどこから来た?」
「そんなことはどうでもいいことじゃ」
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